適応障害に正しく対応できない上司の共通点は、病気に対する無知だと、森下さんは指摘する。
「念頭におくべきは、二つ。医学的に正しい知識を身につける、そして職場の資源を早い段階で利用し、連携を取って組織的に動くことです」
■複数の目で見ていく
上司として、勤怠、仕事、行動の面から部下の変化に注意を払う。テレワークが主な場合、職場環境によるストレス要因は減少するが、コミュニケーション不足による抑うつが生じやすくなる。オンラインを通すなどして意識的にコミュニケーションを取り、部下の様子に気を配ることが求められる。
異変を感じたら、職場内で職員の心の問題をケアする職責を担う人たち(産業医、保健師、人事部門の担当者)に相談をする。
「複数の目で見ていく。問題を共有することで、適応障害を始めとするメンタルヘルスケアを正しい方向に進めていける」
ただし、従業員50人未満の会社では、産業医などメンタルヘルスの担当者がいない場合もある。組織的に作る余裕がなければ、外部の委託もでき、その筆頭が「産業保健総合支援センター」だ。各都道府県にあり、健康相談、産業医の紹介、医師や保健師による事業所の相談、健康診断の結果に基づいた医学的指導、作業環境改善のアドバイスなどを無料で行っている。
森下さんが改めて強調するのは、「自分が部下を適応障害にさせる上司になっていないか」のチェックだ。部下が求めているのは、効率第一ではなくて、人間として尊重してくれる上司。自分の行動を見返してみれば、「これでは部下もたまったもんじゃないな」というところにたどり着けるかもしれない。職場でのストレス要因で適応障害を発症する人が多いという事実を、他人事として捉えていてはいけない。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2021年7月19日号より抜粋