しかし、次期衆院選挙では山口3区だけではなく、衆院新潟2区でも、現職の細田健一衆院議員が公認候補。旧民主党出身で自民党入りした鷲尾英一郎衆院議員は、無所属で出馬とみられている。自民党の閣僚経験者はこう話す。

「二階氏さんも自分にいつ、火の粉が降りかかるかわからないから、必死なんですよ」

 林氏は参院当選5回でいずれも圧勝。そのライバルの一人が、同じ参院5期で選挙に強い世耕弘成参院議員(和歌山選挙区)だ。山口県、和歌山県、どちらも保守王国だ。前出の自民党閣僚経験者がこう言う。

「参院選になると、林氏と世耕氏の当選は決まったようなもの。2人が競うのは、投票総数から算出された得票率。いつも全国でトップ争いをしている。お互い、負けたくないとすごい執念だ」

 2019年の参院選では、世耕氏が約73%の得票率で林氏を上回った。
その前に13年は、逆に林氏が世耕氏に勝っていた。ライバルの林氏が衆院鞍替えとなると、当然、世耕氏も衆院鞍替えの可能性はある。その場合、二階氏の地元、衆院和歌山3区が世耕氏の有力な転出先として注目される。和歌山3区が地盤の地方議員はこう口にする。

「二階氏も80歳を過ぎて、もう年やろう。そろそろ若い世耕先生に譲ってもという声は確かに広がりつつある」

 当の二階氏は世耕氏に譲る気はないようだ。だが、地元の和歌山県御坊市で後継と考えていた長男、俊樹氏が16年の市長選に出馬したが、完敗。二階氏の身内からは後継者が育っていないとみられている。林氏の鞍替えに続き、世耕氏もとなれば、二階氏自身が戦うしかない。

「世耕氏もいずれは衆院に鞍替えし、地盤のある和歌山3区から出馬したいという考えはある。参院選では『林さんに負けたくない』と得票率のキープに苦心している。それに『狙うは首相』という声は何度も聞かされている。参議院では、首相になれんからね。万が一、次の衆院選に世耕氏が出馬したら、二階氏も危ないでしょう」(前出・和歌山3区の地方議員)

 山口3区の情勢は、林氏が河村氏より優勢との声が多く聞かれる。河村氏を衆院議長に推す声がある一方で、若い世代では林氏への支持が広がっている。二階氏も世耕氏と林氏のライバル関係は十分、把握しているという。

「世耕氏は閣僚も経験し、参院幹事長と要職を歴任。衆院鞍替えとなれば、当然、安倍前首相が率いる清和会(細田派)の首相候補でしょう。一番困るのが、二階氏ですよ。林氏に除名と言ったのは、世耕氏をけん制する意味が含まれているのは言うまでもありません。二階氏は今から『二階派あげて、山口3区は応援しなきゃいけない』と言っている。河村氏の身を案じながら、明日は我が身なので、絶対に譲れないでしょう」(二階派の衆院議員)
 
 山口3区のバトルの行方はいかに…。
(AERAdot.編集部 今西憲之)