MLBがより“クリーン”になった中で、1994年以降はおおむね1.0から1.1台で推移し、2014年に0.86まで下がった1試合平均のホームラン数は、2019年には1.39にアップ。年間では6776本と、史上最多のアーチが乱れ飛んだ。その背景にあるのはいわゆるフライボール革命だが、その一方で「飛ぶボール」が使われているのではとの疑念も持ち上がった。そこでメジャーリーグは今シーズンから、従来よりも反発係数を下げた「低反発球」を導入。その結果、昨年は1.28だった1試合平均本塁打数は、今季前半は1.19に下がっている。

 清廉潔白を絵に描いたような大谷と、「ステロイド時代」にあっても薬物疑惑とは無縁で野球殿堂入りも果たしている父を持つゲレーロ。そんな2人が、昨年までよりもホームランが出にくい環境で、ハイレベルなアーチ合戦を繰り広げているということになる。

 もちろん大谷の魅力はホームランだけではないし、ゲレーロには三冠王の期待もかかる。ただ、大谷に関していえば、オールスターでの二刀流という夢が現実になった今、「『ポスト・ステロイド時代』では初のシーズン60本塁打を日本人選手が達成する」という新たな夢を実現してほしいという思いもある。

 プロ野球は中断期間に入り、来週には金メダルをかけた侍ジャパンの戦いも始まるが、海の向こうの大谷翔平からも、ますます目が離せなくなりそうだ。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

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