大宮エリーさん(左)と小椋佳さん(撮影/写真映像部・高野楓菜)

大宮:すごい。小椋さんが考えたんですね。

小椋:そうね。それから大体、「銀行として初めてやる業務は、全部神田(小椋さんの本名)っていうやつにやらしゃあいいや」ってなった。

大宮:ひえー。そんな面白かったのに、辞めちゃうわけですよね。

小椋:49歳でね。

大宮:なんでだったんですか。

小椋:平家物語の最後の章にあるけど、「見るべきほどのことは見つ」っていうことだよ。上から下まで、横も縦も、もう見終わった。

大宮:組織の一員としての生活が、作詞に生きましたか。

小椋:どうですかね。仕事というのは、普通2、3の選択肢から一つを選ぶんだよね。支店の預金の件数を伸ばすためには、人海戦術がいいか、何がいいか。その中の一つを選んで、一生懸命やるんだよ。ところが歌作りは、全く無限の選択肢でしょう、言葉なんていうのは。

大宮:なるほど。

小椋:歌を作るって、初めて素の自分、それこそ青春時代の「俺、何のために生きてるんだ」へ戻らないとできない作業なんですよ。

大宮:その青春時代の問いに回答は、何歳くらいで出たんですか。

小椋:出ないよ。

大宮:えっ、出ないですか?

小椋:だってないんだもん、そんな答えは。

大宮:でもさっき……。

小椋:たばこの話と同じ。生きてる意味はなんだ、なんてない、答えが。

大宮:ないっていうことに気づいたんですね。

AERA 2022年12月5日号

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