武田:月曜日に提案したことが、火曜日に批判されて、水曜日には取り下げるみたいなことを毎週のようにやっていたら、普通、社長はクビで、会社はやがて潰れます。オリンピック関連の諸問題について、指摘する方が明らかに冷静で、指摘される方が感情的に動いている。それなのに、感情的に逃げ回っている人たちよりも、その都度、「それはおかしい」と訴える側の方が感情的だという風潮に切り替わってきている。それはメディアの問題も大きいと思いますが、いや、それくらい見極めてくださいよ、と感じますね。

安田:つい最近、パレスチナのことを調べていた関連で、S・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」という映画を見返したんです。1972年の旧西ドイツのミュンヘンで、オリンピックの開催中にパレスチナの過激派組織「黒い9月」がイスラエル選手団11人の命を奪いました。この時、オリンピック中止の声が出たはずなんです。にもかかわらず1日遅れでオリンピックは再開しました。当時掲げられたのは、「オリンピックはテロに屈しない」「テロに勝った」。これってものすごい既視感があるなと思っていて。

 最近はあまり言われなくはなりましたが、今回のオリンピックもいつの間にか「コロナに打ち勝った証し」みたいなことが掲げられて、死者が出るかもしれないというリスクがかき消されていきました。これって、もう何十年も前からオリンピックそのものが抱えていた病理というか構造的な問題だと思います。

武田:オリンピックを開催し、世界各国から選手や関係者が来日し、それが合図となり、人の流れが増えれば、感染者数が増えるという予測が専門家から出ています。感染者数が増えるということは、その中から、亡くなる人が出てくるということ。誰かが亡くなるかもしれない、それなのに開催する、という判断がよくわからない。少しはしょうがないでしょ、ということなのか。

安田:おっしゃる通りです。政府や組織委員会の人たちは、専門家の意見に耳を傾けるというよりも、専門家をオリンピック開催のための「お墨付き」を与える人のように扱っているんですよね。

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