「身長はゴジラのほうが高くても、力はコングのほうが圧倒的にあると思います。普通に考えれば、同じくらいのサイズ感であれば、爬虫類よりも霊長類のほうが力はあるからです。おそらくですが、コングのパンチが1発、2発入るだけで、ゴジラは相当痛い。失神はしないでしょうけど、戦意を喪失させるには十分な破壊力です。通常サイズのチンパンジーやゴリラでも300~500キロの握力がありますからね。ゴジラの頭は意外と小さいので、コングがアイアンクローをしただけでも下手したら勝つかもしれない」
陸上で接近して戦ったらコングが有利と言い、「殴り合いでは相手にならない。曙がホイス・グレイシーと戦っても勝てなかったのと同じですよ」とみる。
■ゴジラ最大の必殺技
一方のゴジラは接近すると、どんな攻撃を繰り出すのか。
「ゴジラの身体の構造からして、パンチやキックはおそらくコングのようにはできない。噛みつきや尻尾での攻撃が基本になるでしょうね。でも、その程度の攻撃は、コングは避けてしまうでしょうから、接近戦ではやはりゴジラの分が悪い。ゴジラの水中移動速度は時速約74~92キロみたいなので、水中で戦えば有利になるでしょうね。コングはきっと泳げないでしょうから」
だが、ゴジラには最大の必殺技がある。口から吐き出す「放射熱線」だ。
「コングが勝つには接近するしかないのですが、ゴジラが放射熱線を使ったらコングに勝ち目はないでしょうね。あんなものを浴びて生きていける生物はクマムシぐらいですから!(笑)。もし、うまく避けられたとしても、コングはその場から逃げ出すに違いない。人間を襲う猿ってたまにいるでしょ? ああいう猿でも、猟銃を持った人間には絶対近づかない。それと同じです」
ちなみにゴジラが吐く放射熱線のエネルギー放射量は「3.15×1014(10の14乗)ジュール」。これは、いったい、どのくらいの威力なのか。
福島大学環境放射能研究所に聞いてみたところ、「日本の夏の快晴時の1日の日射量を『1億年分』集めたエネルギーに相当する」ということらしい。何やらイメージしづらいが、莫大なエネルギーであるということはわかる。たしかに過去の作品では車や建物が溶けたり、一瞬で焼き切れたりするなどの描写が存在する。コングがいかに知性と腕力を駆使しても、あれを食らったらやはり勝負ありか。町田さんは「防ぐには『新世紀エヴァンゲリオン』のATフィールドくらいしかないですよ」と笑う。
架空の生物に理屈を当てはめること自体、野暮なこと。だが、たまにはこんな楽しみ方もありではないだろうか。「ゴジラvsコング」を制作したレジェンダリー・ピクチャーズは、次回作に着手しているという噂もある。今度はどんな戦いが実現するのか。楽しみに待ちたい。(文/AERA dot.編集部・岡本直也)
◎パンク町田/1968年8月10日東京生まれ。ULTIMATE ANIMAL CITY代表(UAC)。NPO法人生物行動進化研究センター理事長、アジア動物医療研究センター(日本ペット診療所)センター長、昆虫から爬虫類、鳥類、猛獣といったありとあらゆる生物を扱える動物の専門家であり、動物作家。野生動物の生態を探るため世界中に探索へ行った経験を持ち、3000種以上の飼育技術と治療を習得している。UACの1セクションであるアジア動物医療研究センターでは種の保存を考え、希少動物の医療研究も日本一の臨床データ数を誇る。独特の容姿と愉快なキャラクターがうけテレビ出演も多数。その他動物関連での講演、執筆など多方面で活躍中