開頭術の「開頭クリッピング術」は、脳動脈瘤の根元部分をチタン製などの金属のクリップで挟んで破裂を防ぐ治療法だ。根治性が高く、再発リスクの低い治療とされている。

 血管内治療の「コイル塞栓術」は足の付け根の太い血管からカテーテルを入れ、X線透視画像を見ながら、脳の血管にまで到達させ、動脈瘤の中に極細のコイルをくるくると詰めていく。これにより、動脈瘤内の血液が血栓化して血液が流れ込まなくなり、脳動脈瘤の破裂を防ぐ。

 この血管内治療のデバイスや技術の進化は近年目覚ましく、からだに負担の少ない血管内治療で未破裂脳動脈瘤のほとんどが治療できるようになってきている。森本医師は血管内治療のメリットについてこう話す。

「開頭手術は一回の処置で根治性が高いのがメリットですが、頭を開くため、からだへの負担も大きい。血管内治療は開頭術よりも傷が小さく、からだの負担が少ないため、治療後の回復も早いです。後者は比較的高齢な患者さんでも治療が可能ですし、入院日数も開頭術の場合は約1週間ですが、血管内治療なら約4~5日と短めで済みます」

 血管内治療技術の進歩に伴い、開頭術は減少傾向にあるものの、治療法として確立されていることもあり、脳動脈瘤の場所によっては開頭術のほうが有利な場合もある。

「血管の末梢の動脈瘤やこめかみ付近の中大脳動脈の動脈瘤では、カテーテルで血管内からたどるよりも開頭したほうが届きやすい。“ネック”と呼ばれる脳動脈瘤の入り口が広い場合も、コイルが正常血管に逸脱しやすいため、開頭術が選択されることがあります」(津本医師)

■持病の治療が優先な場合も

 動脈瘤と正常血管の境界が広い動脈瘤の場合、正常血管に金属の筒状の“ステント”を留置してコイルの逸脱を防ぐ「ステント併用コイル塞栓術」も登場している。

 また、境界部分の広い大きめの動脈瘤の治療で新たに普及し始めているのは「フローダイバーター」だ。動脈瘤の入り口を覆うように正常血管に特殊な細かい網目構造のステントを留置し、動脈瘤内への血液の流入を防ぐことで動脈瘤を血栓化できる。

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