月刊誌での安倍晋三前首相の発言が、波紋を呼んでいる。コロナ禍で五輪開催に反対」する人たちは「反日的」なのだろうか。AERA 2021年8月2日号で識者たちに意見を聞いた。
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安倍晋三前首相の発言は、6月下旬発売の月刊誌「Hanada」(8月号)でのジャーナリストの櫻井よしこ氏との対談の中で出た。
「共産党に代表されるように、歴史認識などにおいても一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の(東京五輪)開催に強く反対しています。朝日新聞なども明確に反対を表明しました」
発言は、櫻井氏が、野党は東京五輪の開催で日本から海外への感染拡大を懸念しているとし、「菅政権を引きずりおろすために五輪を政治利用している、と言わざるを得ません」と批判したことを受けて出た。安倍氏は、「彼らは、日本でオリンピックが成功することに不快感を持っているのではないか」などと同調し、先のように述べた。東京五輪に反対する人は「反日」とも受け取れる言い方だった。
■反対署名は14万筆
7月23日、コロナ禍での五輪が幕を開けた。だが、直前まで中止を求める声は多く、19日には社会学者の上野千鶴子さんらが、五輪反対のネット署名約14万筆を東京都に提出した。五輪に反対する人たちは、どんな理由からなのか。
本誌は7月12~16日、インターネットを通じてアンケートを実施。この問題への関心は高く、10~70代の2443人から回答を得た。五輪に賛成か反対か──。「反対」が約67%と、「賛成」の約24%を大きく上回った。「どちらでもない」は約9%だった。
反対の理由で多かったのは、感染者が増え続けているコロナ禍での開催の不安だ。
「現実を見てコロナが終息していないのに開催することで、感染者が増加するのが目に見えている」(29歳、会社員男性)
五輪のあり方に疑問を投げかける意見も少なくない。
「五輪はごく少数の権益者の金儲けのためのイベントに成り下がっているから」(51歳、無職男性)