瀬戸のレースは、どこか先のことを考えたレースをしているように感じられる。400m個人メドレーの時は、翌日午前に行われる決勝のために体力を使わない選択をしたことで敗退した。200mバタフライは、予選後で1分55秒26だったにも関わらず、準決勝では予選よりも後半に失速して1分55秒50にタイムを落としてしまった。ただ、全力を出し切ったというよりも、どこかすべてを出し切っていないように思えた。それは瀬戸のコメントにも表れている。
「うまく泳げなかったので……。また決勝に駒を進められませんでしたし、うーん……難しいなって思います」
うまく泳ぐ必要はない。400m個人メドレーでのミスを払拭するには、一度全力を出し切ってしまったほうが良い。特に、瀬戸は今まで最初から最後まで、常に全力疾走だった。予選も、準決勝も、決勝も。だが、ここにきてレースをコントロールしようという意識が強すぎるのか、全力で泳ぐことを拒否しているようにすら思えてしまう。
瀬戸自身が言っていたように、残りは200m個人メドレーを残すのみ。予選だから、準決勝だからではなく、とにかく1本、東京五輪という舞台で全力で泳いでほしい。そうすれば、きっと身体にも、気持ちにもスイッチが入るはずだから。
200m個人メドレーには、長年切磋琢磨してきた萩野公介も出場する。リオデジャネイロ五輪のときは400mだったが、今回は200mで、同じように表彰台をともに獲得するようなレースを期待して。