音頭には、さくらさんの静岡への思いが込められている。2013年に音頭が完成した際、さくらさんは次のような喜びのコメントを残している。

「私の生まれ育った静岡の、おいしい物やおなじみの名所をいっぱい入れて楽しい音頭を作りたいと思って作詞いたしました。昔からの大ファンの細野さんに作曲をお願いし、友達の小山田君がアレンジをしてくれて、静岡市出身のピエール瀧さんが歌って下さり、パパイヤ(鈴木)さんが踊りの振り付けをして下さり、本当にうれしいすてきな音頭が出来ました!! 」

 小山田氏も完成時、「さくらさんに頼まれて、この曲のアレンジをしているうちに静岡県に行って、まぐろとしらすとモツカレーを食べてみたくなりました」とコメントを出し、抜擢にはさくらさんの意向があったことを明かしている。

 さくらさんはコミックスのおまけページや漫画『コジコジ』の作中に、「小山田君」や、小山田氏のソロユニット「コーネリアス」、ピエール瀧氏のバンド「電気グルーヴ」の名前をさりげなく登場させてきた。他にも小山田氏は、アニメ「ちびまる子ちゃん」のオープニングテーマ『ハミングがきこえる』の作曲を手がけており、さくら作品との縁は深かった。さくらさんが亡くなった際にも、コーネリアスとしてのツイッターアカウントで「さくらさん、あまりに突然でショックです…」と悲しみを表していた。

 さくらさんは小山田氏やピエール瀧氏らに期待をかけ、音頭が静岡のPRに寄与することを望んでいたはず。それだけに、このような経過をたどってしまったことは残念に思えてならない。

 小山田氏に代わって、新たな編曲者を迎える予定はあるのだろうか。市の担当者は、「再開の方針についてはまさに検討しているところです」と回答。再復活するか否かも含めて検討中という。

 記者も静岡で生まれ育ったため、静岡の自然や食を愛したさくらさんの思いに共感を覚えている。予算はほどほどに、なんとか復活の糸口を見つけてほしい。
(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)