担当者は停止を決めた理由について、こう話す。

「音頭については、市民の皆さまに愛していただいて、初めて効果が上がる。皆さんに愛してもらえなければ意味がないと思っていますので、市民の声を考慮しながら進めていきたい」

 この音頭のプロジェクトでかかった費用の総額は2000万円を超えた。その額からも、市の気合いの入りようがうかがえる。市は一度目のお蔵入り前の楽曲の製作委託費に、約1260万円を投じた。その後、新バージョンの制作費用(TARAKOさんの歌唱の収録や吹き替え)に約200万円。CD制作費など普及啓発費に約240万円。

 ほか、静岡鉄道との提携事業(まるちゃん音頭のデザインを全車両にかたどったラッピング電車や駅のサイネージでの動画使用)に約720万円。ラッピング電車の出発式のイベントに30万円を使った。

 音頭を前面に押し出したラッピング電車は、「楽曲不在」の中、現在も走り続けている。市は運行の停止も含めて検討したが、「小山田さんが関わっている部分ではない」として生かすことを決めた。ただ、静岡鉄道の静岡駅と新清水駅の構内で流していた音頭のPR動画については楽曲付きだったため、使用停止を余儀なくされた。

 静岡鉄道の広報担当者は「TARAKOさんが歌ってくださって再出発したばかりの中でこうなったので、本当にびっくりしています。細野晴臣さんのような豪華メンバーで作られた楽曲なので、残念」と話した。

 市の担当者によれば、「どちらかといえば、ピエールさんの時には、『音頭が好きなので歌唱者を続けて残してほしい』『ピエールさんに罪はあっても音楽に罪はない』といった、存続を希望される声が多かった」という。

 小山田氏の騒動の際も、SNSでは「作品に罪はない」といった意見が散見された。実際に作曲を担当した細野晴臣氏の心境も気になるところだ。事務所を介して細野氏にコメントを求めたが、「ただいま、自身の制作が佳境の状況で、当面は制作以外に余裕がありません」との回答だった。

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さくらさんと縁の深い小山田氏