<被疑者安倍の犯意について(会費の)不足額の発生や支払等について、秘書と被疑者安倍の供述だけではなく、メール等の客観的資料も入手した上で被疑者安倍の犯意の有無を認定すべき>

<十分な捜査を尽くしたうえでこれを肯定する十分な証拠がないとは言いがたく、不起訴処分の判断には納得がいかない>

 特捜部に対し、安倍前首相の事情聴取だけにとどまらず、客観的証拠などを精査し、より突っ込んで捜査すべきと強く求めているのだ。今後、特捜部は安倍前首相を再捜査することになる。

 公職選挙法違反容疑で、議員辞職に追い込まれた菅原一秀元経産相は、検察審査会で「起訴相当」と議決された。だが、安倍前首相の場合は、一つ手前の「不起訴不当」。

 再捜査で安倍前首相に被疑事実がないとされた場合は、そのまま不起訴となる。だが、検察幹部はこう胸の内を語る。

「検察審査会に担当検事が呼ばれたことは聞いていた。しかし、今回、不起訴不当が出るとは思いもしなかった。検察審査会は一般市民が申し立てを受けた事案について判断を下す。検察と市民感覚の違いを痛感させられた。議決書をよく読むと、特捜部の捜査は甘い、相手が首相なので忖度したんじゃないかと読める。政治、検察への不信感が滲み出ている。これまで不起訴不当であれば、再捜査でも不起訴が定番だったが、今回はそう簡単にはいかないのではないか。検察にとっても大きな試練だ」

 一方、安倍前首相はこうコメントした。

「検察当局が厳正な捜査を行い、全面的に協力をしてまいりました。その結果、不起訴との判断が示されたと承知をしています。今後、当局の対応を、静かに見守りたい」

 一般市民が判断する検察審査会。7年8か月続いた安倍一強の長期政権下で、桜を見る会だけでなく、疑惑はいくつもあった。国民の政治不信を率直に表現しているのが、議決書の<まとめ>の部分だ。

<「桜を見る会」は税金を使用した公的な行事であるにもかかわらず、本来招待されるべき資格がない後援者の人達が多数参加しているのは事実であって(中略)厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい>

 安倍前首相の「桜を見る会」の私物化をこう疑問視していた。

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秘書のせいにせず、説明責任を果たせ