※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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岐阜大学病院精神科教授の塩入俊樹医師
岐阜大学病院精神科教授の塩入俊樹医師
不安症データ
不安症データ
不安症の好発年齢
不安症の好発年齢

 大切な試験の前や心配事があるときなどに不安を感じるのは、ごく当たり前の反応だ。しかし過度の不安でふつうに生活できない状態が続いていたら、「不安症」という精神疾患の可能性がある。

【データ】不安症のかかりやすい年代は?主な症状は?

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 不安は不快な感情だが、人間は不安のおかげで危険やトラブルを回避し、身を守る行動をとることができる。しかし不安があまりにも強すぎる状態が長く続くと、ふつうの生活ができなくなることがある。こうした状態を「不安症」といい、治療が必要だ。岐阜大学病院精神科教授の塩入俊樹医師はこう話す。

「不安症の患者さんはとても多い。以前WHO(世界保健機関)がおこなった患者1日調査によると、日本における不安症全体の推定患者数は、うつ病やうつ状態の300万~600万人を上まわる1千万人以上と報告されています」

■恐怖に近い不安、発汗や吐き気も

 不安症は、不安を感じる対象や症状などによっていくつかのタイプに分けられる。代表的なものが「社交不安症」「全般不安症」「パニック症」だ。

●社交不安症
「社交不安症」はかつて対人恐怖症やあがり症、スピーチ恐怖などと呼ばれていた病気で、「人とかかわる場面」で耐えがたいほどの強い不安を生じる。スピーチや初対面の人との会話など、人前で何かをするときは多少なりとも緊張するものだが、社交不安症の人が感じる不安は恐怖に近いくらい強く、発汗や震え、赤面、吐き気などをともなう場合もある。

 こうした体験をすると、また恥ずかしい思いをするのが怖くなり、人との接触や人前での行動を避けるようになる。学校や会社に行けなくなり、不登校や引きこもりに発展するケースも多い。

「社交不安症を発症する平均年齢は14歳前後で、思春期に集中しています。人前でうまく発言できずに恥をかいたなど、思春期によくある『嫌な体験』が発症のきっかけになっていることも少なくありません」(塩入医師)

●全般不安症
 一方、「全般不安症」は30代以降で発症することが多く、女性のほうが男性の2~3倍かかりやすい。病名どおり、不安を感じる対象が一つではなく、なんでもかんでも不安になる。病気かもしれない、夫が会社をクビになるのではないか、自分や家族が事故にあったらどうしようなどと、とりとめのない不安が次から次へと頭に浮かんできて、仕事や家事が手につかなくなってしまう。

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