「自分が死んだ後の『死後の手続き』は家族や親族がいる人はいいのですが、子どもがいない、兄弟姉妹や配偶者には先立たれて、離れて暮らす親族には頼めないという人が増えています。葬儀や埋葬や、死後の手続きを行う『死後事務委任契約』を結ぶと安心できます」

 そう語るのは、D子さんを看取った司法書士法人ミラシア、行政書士法人ミラシア代表の元木翼さん。

 注意したいのは死亡届。自治体に出す死亡届は戸籍法により提出する人は家族や親族、後見人などに限られているので、判断能力が低下したときに備える成年後見制度の「任意後見」と一緒に契約するのが一般的という。

「遺言書では財産の継承以外の死後の手続きについて記載しても、法的な拘束力はないので、遺言書と死後事務委任契約をセットで、公正証書によって作成します」(元木さん)

 D子さんのケースでは、病気で入院したとき、病室での付き添いや医療費の支払いなどは元木さんが任意後見人として代行した。

 いよいよ危篤の状態になったときに医師から連絡が入り、D子さんを看取った。亡くなった後から、死後事務委任契約の「受任者」として生前に契約で結んだ内容に沿ってさまざまな手続きを実行していった。

 まず、葬儀会社の手配をして、「喪主代行」として葬儀の準備に取りかかる。事前に甥や姪、関係者のリストを作ってもらい、D子さんが亡くなったことを連絡して、葬儀から火葬、納骨するまで仕切った。その一方で、行政関係の届け出、電気・ガス・水道など公共料金の支払い停止、固定・携帯電話、インターネットプロバイダー、クレジットカードなどの解約をし、遺品整理の業者に連絡して家財を片付けて、自宅を家主に引き渡した。

 気になるのは、これらの費用。死後事務委任契約は、決まった形式はないが、公正証書で交わすケースが多く、公証人の手数料が約2万円。

 死後事務委任契約の報酬に基準はなく、受任者に支払う報酬の相場は30万~50万円。委任する業務が多いほど価格は上がる。このほかに、葬儀代や遺品整理業者などへの支払いが別途かかる。実費を含めてトータルで100万~150万円あれば、無事にお墓まで連れていってくれるのだ。

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