「着任早々でした。消毒会社が定期的に実施する『殺鼠殺虫』の報告書を見ると、ネズミ60匹を捕獲退治したと書かれていました。その数に驚いて消毒会社に聞くと『念のためもう一回やりましょう』と言うので、お願いしたんです。なんと2度目の殺鼠報告書にも57匹捕獲とあった」
数の多さを心配した牧野氏が上司に報告すると、上司は「高層ビル群の下に人間よりも多くのネズミが生息している。うちのビルで殺鼠剤を使っても、ヤツらは隣のビルに逃げ込むんだ。逃げ遅れた60匹くらいのバカなネズミが捕まっているだけだ」と言ったそうだ。
「上司が言うには、『ネズミを殲滅(せんめつ)しようとしても無駄だ。人前に出てこないようにしつけるんだ。そのための警告が殺鼠剤なんだ』って。互いのエリアから出ないで共存共栄するしかないのかもしれませんね」
しかし、そんな共存共栄状態がコロナ禍の影響で破綻した可能性もあると小松さんはみている。
「感染対策で飲食店が営業できずにいた時期に、クマネズミは厨房でエサを得られなくなりました。他の害虫や仲間の死骸を食べるなどして飢えをしのいでいたが、それも限界になって外へ出て、ゴミをあさっているところを目撃されたという事例は世界中の都市から報告されています」
飲食店の営業が再び活発になっている今、飢えていたネズミたちは食料にありつけホッとしているかもしれない。彼らが飲食店の店内などをわが物顔で物色しないようにするにはどうしたらいいのか?
小松さんによると「駐車場の入り口や自動ドアの隙間など、小さな隙間や穴をふさぎ、侵入させない。それが最大の防御でしょう」とのこと。
ネズミとの戦いは長期戦になりそうだ。(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2022年12月9日号