粘着シートで捕獲しきれなかった理由もそこにあると小松さんは言う。
「ドブネズミは穴を掘ったり、毛にホコリがついていたりで、粘着シートでは捕まえにくいというのもあります。エサ場を求めての移動距離もせいぜい100メートルとされているので、新橋や銀座に移動したとは考えにくいですね」
東京都や各区、保健所などに寄せられたネズミ被害の相談件数でみると、クマネズミとドブネズミがほとんど。最多数を占める「その他」は「種類が不明なネズミで、おそらくはクマネズミかドブネズミでしょう」(都環境保健衛生課)という。
素人目には大きさで見分けるくらいしかできないが、両者の生態はかなり異なる。クマネズミは臆病で用心深いのでワナにかかりにくいうえ、殺鼠剤も食べてくれない。対してドブネズミは警戒心が弱く、ワナにかかりやすいが凶暴なので、追いつめられると向かってきて噛みつくこともある。
また、クマネズミは上下の移動に長け、パイプ伝いに建物の地下から屋上までを行き来できるが、ドブネズミは1階の天井より上には行かない。クマネズミは建物内にいることが多いが、ドブネズミは建物なら1階以下、屋外なら土中にすむ。
「ドブネズミは渋谷のハチ公前や高田馬場、池袋の駅周りの花壇に穴を掘ってすんでいたり、幹線道路の植栽帯に潜んでいたりすることが多いです。一方のクマネズミは主に飲み屋街の雑居ビルにすんでいます」
築地市場が閉鎖した翌年に渋谷のコンビニで複数発見され、その模様がSNSで拡散されて店が閉店に追い込まれる“ネズミ騒動”が起きたが、小松さんによると、これはクマネズミだという。一方の築地はドブネズミが中心。最近、繁華街で目撃談が増えたように感じるネズミたちは、おそらくは昔から繁華街にいたのだ。
■飲食店の休業でエサを求め外へ
不動産事業プロデューサーでオラガ総研代表の牧野知弘氏がおもしろいエピソードを紹介してくれた。20年以上前、牧野氏が西新宿の高層ビルで管理の仕事をしていたときのことだ。