新型コロナウイルスの感染爆発の中、「安全・安心」を掲げて開催された東京五輪が8日、閉幕した。五輪開幕後、テレビのニュースやワイドショーではコロナ関連のニュースが減り、競技の中継やメダル獲得を笑顔で祝うニュースが続いた。世の中の空気が変わる中、政府から「一部の中等症患者は自宅療養」という突然の方針転換があり強い批判を浴びた。こうした状況を、最前線の医療従事者はどう見たのか。五輪中止を訴え発言してきた、立川相互病院(東京)の高橋雅哉院長に思いを聞いた。
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全国的に、これまでにない感染爆発が続く状況。立川相互病院でも7月の新規入院者数は57人で、第3波で入院者数が急増した昨年12月の49人を超えた。病床ひっ迫に危機感を強めた病院は今月に入り、コロナ患者用の病床を20から35に増やす対応をとった。
「感染者数の推移をみれば、五輪の強行が感染爆発の原因となったことは明らかです。五輪開催に向かう中で、多くの人たちの気が緩み、自粛をやめてしまったことが主因だと考えます」
開口一番、高橋院長はこう憤った。
■感染爆発はまさに災害
高橋院長は今年5月以降、「もうカンベン オリンピックむり」 「憤怒 医療は限界 五輪やめて」 などと、五輪中止を訴えるメッセージを病院の窓に張り出し、話題となった。感染拡大を止める科学的、技術的な方策が示されていない中での五輪開催は、医療機関として責任を持てないと考えたことが理由だ。
「五輪と感染爆発の因果関係を示すエビデンスはない、という指摘をする方がいますが、現在進行中の事象に対してエビデンスを構築するのはたやすいことではありません。しかし、(7月22日からの)4連休後に爆発した感染者数の推移を見れば、五輪が原因となっていることは明らかです。菅首相も小池都知事も、五輪のせいだとは絶対に言わないでしょうが、これだけ感染が増えているのに即座に五輪を中止しないのは、もはや倫理的にも問題ではないかと感じています」