実際に演じる役どころも好青年や良い人が多い。中でも、「家売るオンナ」で演じた頼りない若手営業マンはハマり役。主演の北川景子演じる上司の厳しい仕事ぶりに振り回されながらも、何とか応えようとめげずに成長していく姿に好感を持った人も少なくないはずだ。
「確かに後輩役はとても似合いますが、2017年に放送された井上真央主演ドラマ『明日の約束』(フジテレビ系)では、劇中、好青年として描かれる中、第7話で恋人の髪をつかんでキレる豹変ぶりが話題になりました。また、2019年放送の賀来賢人主演ドラマ『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系)では、陽気なスーパーファンキー刑事を怪演。アクションシーンもあり、当時のWEBマガジンのインタビューでは、『いつでもアクションシーンが演じられるように3年前からキックボクシングを始めた』と明かしてました。実は個性的な役柄まで幅広く演じ分けられる役者なのです」(同)
■ギャップを生かした大胆な演技に注目
続けて、「俳優業に対する姿勢にも人柄が出ている」と言うのは民放ドラマ制作スタッフだ。
「俳優同士で誰には負けたくないとか、相手を食ってやるとか、そんな気持ちになったことがないとインタビューで答えていたのが印象的でした。純粋に作品がどうすれば良くなるかだけを考えたいそうで、『芝居が良かった』と言われるよりも、『作品が最高だった』と言われたほうがもっとうれしいのだとか。若手俳優でこういう考えの人は珍しいかもしれません。工藤の場合、特別な存在感のある俳優ではありませんが、悪目立ちしないので存在自体が主役をしっかり輝かせることにつながっていく。特に人気シリーズのドラマとなると、ストーリー展開だけではなく主役の魅力も重要ですし、シリーズものにはうってつけの俳優だと思います」
ドラマウオッチャーの中村裕一氏は、工藤の今後をこう分析する。
「1月クールのドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』では、小芝風花演じる主人公・モコミの兄を演じました。周りから『いい人』として扱われてきた彼が、ふとしたきっかけで長い間抱えていた心の闇を開放するシーンでは、それまでの妹思いの兄として振る舞ってきた穏やかな演技との振り幅に驚かされました。きっと本人はめったなことで怒ったりしない穏やかな性格だと思いますが、それだけに感情をむき出しにする演技は真に迫るものがありました。味方のようで実は裏切り者だったみたいな、童顔で好青年というパブリックイメージとのギャップを最大限に生かした大胆な演技を多くの作品で見てみたいですね」
今年3月までは朝の情報番組「ZIP!」(日本テレビ系)の水曜パーソナリティーを務めるなど、お茶の間の好感度も高い工藤。演技力も確かで、息の長い活躍を見せてくれそうだ。(丸山ひろし)