「祖母が経営するアイスキャンデー屋の壁にスクリーンを貼り、第二劇場とした時期もありました」
本書のタイトルにある「場末」は、父の口癖だ。新作が回ってくる順番が遅く、田舎町にあるためだが、一方で、上品すぎず堅苦しくない、庶民の憩いの場であろうとする矜持もうかがえる。
休館から50年近く経っても、この映画館が生きていることが注目され、同館所蔵のポスター展も開催された。
「2019年の本宮水害でフィルムが水没した際には、多くの人たちが救援に駆けつけてくれました。それまで一人で劇場を守ってきた父は、とても喜んでいました」
3代目修業中の優子さんはツイッターで情報発信したり、イベントを企画したりと奮闘している。自分で映写できるようになるのが夢だ。
「この映画館を自然に人が集まる場所にしたい。こんな映画館があると知ってもらえたら嬉しいです」
(南陀楼綾繁)
※週刊朝日 2021年8月20‐27日号