各国政府、自治体にとってコロナ禍に苦しむ経済を立て直すためには、テスラだけでなく、どのメーカーのギガファクトリーも格好の起爆剤になる。地球温暖化対策に貢献し、雇用も確保でき、EVシフトの世界的主導権争いで優位に立てる。日本では感じられないが、欧州でのギガファクトリーへの入れ込みようが本気なのは確かだ。

■2035年の欧州─―EVとFCVしか販売できなくなる日

 見逃してならないのは欧州連合(EU)の執行機関「欧州委員会」の動きだ。今年7月14日、欧州委員会は気候変動対策に関する包括的な政策文書を発表。2035年までにEU域内の新車供給をゼロエミッション車(温室効果ガスを排出しない自動車)に限定するという厳しい内容になっていた。

 つまり、2035年には、ガソリン車、ディーゼル車だけでなく、ハイブリッド車(HV)もプラグイン・ハイブリッド車(PHV)も販売禁止となる見込みだ。そうなれば新車販売できるのはEVと燃料電池車(FCV)だけになる。

 賛否両論ある中で、欧州はEV化を旗頭に21世紀の自動車業界の主導権を握る腹積もりだ。欧州のギガファクトリー建設ラッシュも、VWなど欧州自動車メーカーのEVシフトもこの政策の流れに乗っている。

 一方、トヨタは欧州のEVシフトとは対照的に、HV、PHV、EV、FCVの全方位戦略を打ち出していて、今年5月に発表した内容によると、2030年時点での欧州販売は、EVとFCVとで全体の4割を、残りの6割はHVとPHVにする計画だった。しかし、ここにきて軌道修正が必要となった。

 なにより、2020年のトヨタの世界販売台数をみると、約77%がガソリン車で、HVが約22%、PHVは約0.5%。一方、EVは約0.03%で、FCVに至っては約0.02%に過ぎない。

 米中両政府も欧州に追随しそうな様相の中、トヨタはどうやってEVとFCVを伸ばしていくのか。

■トヨタEV化への最大の課題は、下請け企業の再編

 FCVについては別の機会に話すことにして、ここではEV化の2つの課題について話そう。

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