ベテラン俳優として、今も活躍する渡辺えりさん。長年の友人である作家・林真理子さんとは演劇のことから、結婚披露宴のことまで語り合いました。
【芝居の「赤字1千万」も補填 渡辺えりの老後貯金より大事な豊かさ】より続く
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林:えりさんは昔からご自分のシュールな小劇場の世界と、商業演劇とを行ったり来たりしてらっしゃるけど、商業演劇はえりさんにとってどうなんですか。
渡辺:「渡辺えりは商業演劇に出る役者だ」というファンの方が、今、増えているんですよ。
林:たくさんついてると思う。
渡辺:私、最初、八千草薫さんのお芝居に出演を頼まれて、一度断ったことがあるんです。そうしたら杉田成道さんという「北の国から」の演出家にバーで接待されて、「渡辺さんじゃないとできないから頼むよ」って言ってもらって、それで引き受けたのが商業演劇に出始めたきっかけだったんです。
林:何というお芝居ですか。
渡辺:北杜夫の「楡家の人びと」です。八千草薫さんが長女で、次女が酒井和歌子さんで、三女が桜田淳子ちゃんで、私はその3人を育てる乳母の役だったんです。八千草さんは私の母と同い年なんですが、その八千草さんの30歳年上の役を私がやったんですよ。そしたら評判がよくて。そのあと森光子さんのお芝居にも頼まれて、それでどんどん出るようになって。
林:今や新橋演舞場なんかに欠かせない俳優さんになっちゃっていますもんね。そういうところで、いろんな俳優さんとガシッと組んでお芝居するって、楽しいんじゃないですか。
渡辺:そう。八千草薫さん、森光子さん、勘三郎さん、藤山直美さん、波乃久里子さん、皆さん素晴らしいんですよ。三国連太郎さんの奥さんの役もやらせていただいて、ほんとに演技の勉強になったなと思って、今すごく感謝してます。それを今度は若い人たちに返さなきゃいけないんだけど、そこまでの技量がないの、私には。
林:いやいやえりさん、山形で演劇塾を開いてるんじゃなかった?