一方、『全員集合』の後番組として始まったTBSの『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』が勢力を拡大してきた。ドリフのエースだった加藤茶志村けんの2人が独立して新たに番組を立ち上げたのだ。

 ドラマ仕立ての大がかりなシチュエーションコントが評判になり、高い視聴率をマークするようになった。そんな『加トケン』人気に押されて、1989年に『ひょうきん族』も終了することになった。

 その後、再びフジテレビの反撃が始まった。1990年にスタートした『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』は、新進気鋭の「お笑い第三世代」の代表格だったウッチャンナンチャンによる本格的なお笑い番組だった。この番組が人気を博した結果、TBSの『加トケン』をリニューアルした『KATO&KENテレビバスターズ』が終了に追い込まれた。

 しかし、『やるならやらねば』の天下も長くは続かなかった。番組収録中の事故が原因で突然打ち切りを迎えてしまったのだ。その後、いくつかの番組を経て、フジテレビの「土8」に本格的なお笑い番組が返り咲くことになった。それが1996年に始まった『めちゃ×2イケてるッ!』だった。

『めちゃイケ』は『ひょうきん族』のDNAを受け継ぐ新しい世代の番組として始まった。ナインティナイン、極楽とんぼ、よゐこらを起用して、ドキュメンタリー性を取り入れた新感覚のお笑い番組を作った。『めちゃイケ』はフジテレビの看板番組となり、2018年まで放送されていた。

『めちゃイケ』で確立した若手芸人のお笑い番組のフォーマットが、後続の『はねるのトびら』『ピカルの定理』などにも引き継がれている。

 しかし、『めちゃイケ』の終了後、フジテレビのこの枠でお笑い番組が放送されることはなかった。テレビのゴールデンタイムでは主に高齢者向けの番組が作られるようになり、若者向けのお笑い番組は求められなくなった。それは他局でも同じだった。ゴールデンタイムに本格お笑い番組がしのぎを削るような時代は終わったのだ。

 しかし、近年になってまた時代が変わった。個人視聴率が重視されるようになり、テレビ局は若い世代の視聴者を獲得しようと躍起になっている。そこで、若手芸人中心のコント番組『新しいカギ』も、鳴り物入りで「土8」に参入することになった。

『新しいカギ』がこの伝統ある枠に返り咲いたのは、フジテレビのこの番組に対する期待感の表れだ。お笑い番組はもはや一つの文化であり、その文化は育てていく人がいなければ容易に途絶えてしまう。オリンピックの聖火のように、テレビの笑いも世代から世代へ受け継がれていくものなのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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