土曜8時に進出するコント番組「新しいカギ」に出演しているチョコレートプラネット(C)朝日新聞社
土曜8時に進出するコント番組「新しいカギ」に出演しているチョコレートプラネット(C)朝日新聞社

 チョコレートプラネット、霜降り明星、ハナコが出演するフジテレビのコント番組『新しいカギ』が、10月から土曜夜8時の枠に移動することになった。現在、土曜夜8時には『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』が放送されている。この番組が土曜夜7時の枠に繰り上がり、そこに続いて新たに『新しいカギ』が放送されることになる。この番組が伝統ある「土8(土曜夜8時)」の枠で放送されるというのは注目すべきことだ。

 昔の土曜夜8時の枠は、文句なしにテレビの最重要地点だった。現在でも基本的には同じなのだが、昔はその重要性が格段に高かった。

 というのも、90年代に入って企業や学校で週休二日制が導入されるまでは、一般的な日本国民にとって定期的な休日は一週間の中で日曜日だけだった。そのため、翌日が休みの土曜日の夜というのは、ゆったりとテレビを楽しむことができる貴重な時間帯だった。テレビ局はこの枠に精力を注ぎ込んで番組作りを進めてきた。その結果、のちのちまで語り継がれるような数々の人気番組がここから生まれた。

 その代表例が、TBSで1969~1985年に放送されていた『8時だョ!全員集合』である。ザ・ドリフターズの面々が毎週生放送で観客の前でコントを披露していた。最高視聴率50.5%を記録する伝説の番組だった。

 この番組の快進撃を阻止したのが、フジテレビで1981年に始まった裏番組の『オレたちひょうきん族』である。ビートたけし、明石家さんま、島田紳助、西川のりおなど、当時売り出し中の若手芸人が総出演して、緻密に作り込まれた『全員集合』のコントに対抗して、楽屋ノリとアドリブ満載のコントを披露していた。

『オレたちひょうきん族』が視聴率を伸ばしていくうちに、『全員集合』の覇権にも陰りが見られるようになり、1985年9月28日に終了を迎えた。

 だが、TBSとフジテレビの仁義なき「土8戦争」はここでは終わらなかった。『全員集合』が終わった後、宿命のライバルを失った『ひょうきん族』も徐々に調子を落としていった。1986年に主要メンバーだったビートたけしが講談社フライデー編集部襲撃事件を起こし、しばらく出演ができなくなったのもそれに拍車をかけた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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「土8戦争」の結末は?