大宮エリーさん(左)と小椋佳さん(撮影/写真映像部・高野楓菜)
大宮エリーさん(左)と小椋佳さん(撮影/写真映像部・高野楓菜)

小椋:いやいや、それは高校時代に思い悩んだから。どうやって僕は生きていったらいいんだ、とかね。

大宮:えーっ。全てが早いですね。

小椋:高校の先生がなぜか僕に目を付けて、放課後に特訓したわけ。

大宮:何の特訓ですか。

小椋:国語の。本に赤線、青線引いて精読する。そうしたら、読む本も恋愛小説から、だんだん思想書、哲学書になっていくじゃない。

大宮:はいはい。

小椋:そして僕自身が「哲学病」にかかっちゃって。高校2年の秋から。

大宮:えーっ。

小椋:正義とは何かとか神とは何かとかさ。言葉の世界にのめり込んでいっちゃった。全神経がね、鋭敏になっちゃうんだよ。するとね、カメラのシャッターの音なんかしたら、ブワーンッていう音に聞こえるの。

大宮:うわあ、それはしんどいですね。どうやってはい出したんですか。

小椋:はい出せなかった。治るまでに10年間かかったね。

大宮:じゃあご自身も、なぜ治ったか分からず、ですか。

小椋:たばこのおかげなんだよ。

大宮:あ、意外な。

小椋:たばこの煙の軌道って読めないよね。ある夜中に、たばこを吸って煙を見ていた。ふとね、ちょっと待てよと。僕は人間には分かりっこないことを分かろうとするから悩んでたんだなって思った。そうしたら気が楽になっていった。

大宮:へえ。たばこは恩人であり、お友達ですね。

小椋:絶対やめないね。

AERA 2022年11月28日号

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