作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。8人目のゲストはシンガー・ソングライターの小椋佳さんです。
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大宮:この作務衣(さむえ)は、いつも?
小椋:普段着てますよ。もう死後だから、僕は。
大宮:えっ?
小椋:生前葬(コンサート)は8年前にやって、お葬式も終わっている人間だから。今やってるのは、ファイナルコンサートツアーです。来年の1月まで42回で終わり。
大宮:本当にやめちゃうんですか。
小椋:僕、デビューした覚えがないから、引退もできないんですよ。ただツアーはもうやめようと。
大宮:ああ、なるほど、よかったです。いや、私の父がすごいファンで。生きてれば100歳ぐらい。よく小椋さんの話を聞いてました。
小椋:ああ、そうですか。
大宮:そもそも東大を受験されたのは、何か理由があった?
小椋:文IIIでサンスクリット文学をやって、インドに渡ろうと思ってたんだよ。だけど、模擬テストの結果を見て、高校の先生が「君の成績なら文Iだ」って言うんだよね。
大宮:めちゃくちゃ頭よかったんですね。
小椋:いやいや。僕も弱い人間だね。学校の言うまんまに法学部に行かなきゃいけないのかと思っちゃって。
大宮:期待に応えちゃうタイプ?
小椋:まあ中学以来、優等生になっちゃってたんだね。知らない間にね。
大宮:えーっ。
小椋:違うんだよ、いい成績持って親戚を回るとさ、いっぱいお小遣いもらえるんだよ。ああ、これは成績いいほうが、得だなと思ってさ。
大宮:現金な感じですね。
小椋:それで、予習、復習やるような人間になっちゃって。
大宮:すごいですねえ。でも、そんなに優秀だと、ちょっとこう、性格もねじ曲がりそうなのに……。
小椋:うん、だからいやらしい優等生だったと思うよ。
大宮:本当ですか。作品を聴いていると、もう純粋な気持ちをずっと持っているような。