一般的に、血中酸素飽和度が96%を切ると「中等症1」と診断され、さらに93%以下になると酸素投与が必要になる「中等症2」と診断される。

「90%ぐらいまで落ちると、100メートルを全力で走った後と同じぐらいの息苦しさで、それがずっと続きます。通常なら即入院ですが、今は救急車を呼んでも搬送先が見つかるかは運次第です。酸素濃縮装置も不足し始めていて、今後は、体育館などを借り上げて酸素供給専門の施設を作らなければ酸素投与もできなくなる可能性があります」(佐々木医師)

 家庭内感染を防ぐことも重要だ。

「自宅療養の場合は、可能ならば感染者が使用する『レッドゾーン』と、それ以外の人が使う『イエローゾーン』に家の中を分けます。レッドゾーンでは、感染の危険があることを意識して、看病の際は必ずお互いにマスクをしてください。トイレを共有しなければならない場合は、便を流すときはフタをしてウイルスが拡散しないようにし、手洗いをしっかりして換気も十分にしてください」(鳥居医師)

 感染者は部屋から出ない、感染者と同じ食器を使わないなどの基本的な対策は言わずもがなだ。

 デルタ株は、ワクチン接種が完了した後でも感染する「ブレークスルー感染」が指摘されている。それでもワクチンの、重症化を防ぐ効果は高い。

 大阪府では、3月以降に確認された約8万5千人の新規感染者のうち、ワクチンの効果が最大化する2回目の接種から2週間以上経過して感染した人は317人だった。重症化の症例はなく、死亡者もゼロだった。

「抗体カクテル療法など軽症者向けの治療法が出始めていますが、重症化を完全に防ぐことはできません。現時点で最も有効な感染予防法はワクチン接種です」(同)

 感染した時は、そのことをちゃんと周囲に知らせておくことが大切だと佐々木医師は言う。

「容体が急変した時に、医師や救急隊員がすぐに対応してくれるとは限りません。自分が感染したことをSNSやLINEなどで多くの人に伝えておくと、いざという時に助けてもらえる。困った時に助け合える人の存在が大切です」

 政府が頼りにならない以上、自分の身は自分で守るしかない。(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2021年9月3日号より抜粋

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