

(c) 2021『その日、カレーライスができるまで』製作委員会
リリー・フランキーさん主演の映画「その日、カレーライスができるまで」が9月3日に公開される。リリーさんにとって、初めての一人芝居だ。
【前編/“カレーおじさん”役のリリー・フランキー「今っぽい映画になった」】より続く
イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞作曲、俳優と、さまざまなジャンルで活躍するリリーさんだが、俳優として、「こんな役がやってみたい」とか、「この監督の映画に出たい」などの目標はあるのだろうか。
「家で一人でものを書いているときは、そういう欲みたいなものもあるんでしょうけれど、映画に関しては、私欲はないかもしれない。というのも、自分が一人でやる仕事と映画とでは、圧倒的に関わっている人数が違うので。今回の座組みは、その場でセッションができて、アイデアが浮かんで、そっちのほうがよくなりそうなら、現場でどんどん変えていけた。一人で考えているときは、満点が10点だとしたら、10点になれば上出来です。でも共同作業だと、自分が想像していたものよりも良くなって、12点ぐらいになることがある。それは人と作らないと経験できないことです」
リリーさんは、是枝裕和監督作品などで、何度も樹木希林さんと共演している。俳優として希林さんから刺激を受けたことは何なのだろう。
「誰よりも台本を読み込んでいて、この前後に何が起こるかをちゃんとわかってお芝居をしていた。そういう繊細さみたいなことは教わったかもしれない。あとは、映画監督にとっても、希林さんが出演されることは、一つの安心材料になったと思いますね。希林さんはこのシーンをどう思っているのか聞けるから」
かくいうリリーさんもまた、監督にとっての安心材料になっていることは間違いない。これまで映画を撮りたいと思ったことはあるのだろうか?
「映画は……作るほうが興味ありますね。でもああいうのは、若いときから始めたほうがいいですよ。年をとっちゃうともう億劫でね。出れば出るほど監督の大変さがわかるんです。以前、希林さんに『結婚はもうしないでしょ?』って聞かれて、『しますよ』って答えたことがあった。そしたら希林さんが、『結婚なんていうのは、若いうちにしておかなきゃダメよ。物事の分別がついたら結婚なんかできないんだから。わけのわからないうちにしておかないと、大変だなぁが先に立つの』。そのとき俺、希林さんに言いました。『まだ分別ついていないから大丈夫です』って」