実際、挿入で快感を覚える女性も多いが、クリトリスへの刺激によるオーガズムのほうが強くて確実だという。
「そもそも、女性は全身が性感帯であり、快感を覚えるときに必要な皮膚の感覚は、性器の感覚ほど衰えません。男性も挿入・射精にばかりこだわらず、肌の喜びを一緒に味わうセックスに目覚めてほしい」(大川さん)
海外では、こうした新しいセックススタイルを「ベニス(Very Erotic Noninsertive Sex)」と呼ぶそうだ。
一般社団法人日本家族計画協会(東京都新宿区)の会長で産婦人科医の北村邦夫さんは、「“男性支配のセックス”からの脱却」を訴える。
「アダルトビデオやアダルトサイトは男性を興奮させ、マスターベーションの“おかず”にするために作られたものです。男性週刊誌のセックス特集も同じようなものでしょう。実は男性のなかに、こうしたセックスをすれば女性は喜ぶと勝手に思い込んでいる人が意外と多いんです」
ただ、こうした点に関しては、女性側にも課題がある。先の調査にある「セックスの目的」をみると、男性は「性的な快楽のため」にセックスをする傾向がある一方で、女性は「相手に求められるから」セックスをする傾向が強い。
「今のシニア女性は、性に対する欲求、要望を夫に伝えることが恥ずかしい世代です。だから黙って受け入れ、せいぜいできても拒否するぐらい。そうではなく、これからは女性もみずから“ここを触って”とか、“セックスしたい”とか希望を相手に伝えていくことが必要です」(大川さん)
北村さんは、シニアのセックスは“触れ合いを楽しむ行為”であると捉える。また「愛情よりも同意が必要」という。
「“愛している”は口先でも言えます。“したいのか”“どうしたいのか”を確認することこそ、真の愛情です。相手が嫌だといったら無理強いしない。『嫌よ嫌よも好きのうち』はありません」
若いときのようなセックスはできないし、そこを目指す必要もない。シニアに必要なのは、固定観念にとらわれない、新しいセックスのかたちだ。それは夫婦やカップルで築いていくものだろう。(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2021年9月10日号より抜粋