――なかでも、今年舞台で共演した大竹しのぶとの出会いは衝撃的だった。

 僕にとって、忘れられない日々でしたし、宝物のような出会いでした。芝居をここまで楽しそうにやられている方は、出会った中で1番です。僕もしのぶさんの前では、自分をさらけ出せます。

■劇場は特別な空間

 しのぶさんの話をすると、長くなっちゃうんですけど(笑)。愛情がすごいんです。役、作品、お客さん、劇場、スタッフさん、演劇に関するすべてに対して。あと、毎日芝居が違って、その新鮮度合いがすごい。相手のちょっとした表情や、声や雰囲気、お客さんの空気感を感じ取られているんだと思います。自分もそうなりたいです。

――昨年4月の緊急事態宣言以降、出演舞台の延期など先の見えない状況が続き、一時は「思考停止状態になった」という。

 この先どうなってしまうのか、すごく不安に駆られました。ただ、だからといってすぐに何か新しいことに挑む勇気もなくて。なので、皆さんときっと一緒で、映画を見たり、なるべく下向きにならないよう、今できることをしよう、という意識で過ごしていました。

 僕自身も外出が減ったんですが、久々に劇場や映画館に行くと、非日常を味わえる。特にいまも、劇場に入った瞬間は、日々の苦しいことからちょっと離れられる。特別な空間なんだなと、前より深く感じるようになりましたね。

「友達」は、不気味で暗い話で、えぐみのある部分もあるんですが、お客さんの抱えているつらく苦しい気持ちを、舞台上で演じることで共有できる。それがエンターテインメントの素晴らしさだな、と思います。

■周囲と作りあげる

――昨年6月には、コロナ禍によるさまざまな制約をあえて楽しもう、と生まれたドラマ「世界は3で出来ている」に出演した。「彼以外考えられない」という制作陣からのラブコールに応え、1人3役を演じた。

 自粛後、俳優業が再開できるスタートがあの作品だったんですね。素直に「またお芝居ができる」という喜びがあって、しかも、また一緒に仕事をしたいと思っていた人たちからのお声がけだったので、「ぜひやらせていただきたい」とお受けしました。

次のページ