一方で、長谷川選手は日本テレビの社員でもある。すでに出場辞退の意思を連盟に伝えていた社員を、知らなかったとはいえ出場するかのように広く紹介したことになる。この点についてどう考えるか日本テレビに2回メールで尋ねたが、1週間経った今も回答はない。

 筑波大学教授の菊幸一さん(スポーツ社会学)は今回の連盟の対応についてこう話す。

「もちろん、問題を起こしたパラアスリート個人の問題は、追及されて当然ですが、連盟も出場を辞退させるだけではSNS上でいらぬ臆測やデマが飛び交う事態になるのも当然でしょう。連盟は、何のためにあるのでしょうか。所属する選手の立場を第一に考えなければ、誰が彼あるいは彼の将来を守ってあげられるのでしょうか」

 また、菊さんは所属企業についてもこう語る。

「日本テレビはメディア企業として、一般社員の管理責任だけでなく、それ以上に大きな責任を負う立場にあると考えます。企業は雇用している側としても社員を守らなければならない立場にあるはずで、その観点からも機能を果たしているとは言えません」

 また、日本におけるメディアとスポーツの関係も、今回の問題の背景に横たわっていると指摘する。

「近代スポーツが発祥したイギリスや、その影響を比較的早くに受けたヨーロッパでは、メディアとスポーツとの関係は極めて禁欲的です。例えばメディア自体が、スポーツを主催したり、そのコンテンツに直接関わったりすることをタブー視しているところがあります。なぜなら、メディアとしての公正な報道が保障されないからです。今回の件は、企業として、特にメディア企業としてのスポーツに対するかかわり方にも、そもそも問題があると思います」

(編集部・深澤友紀)

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