「酸素は、生命を維持し、脳や筋肉などを働かせるために必須です。身体を正常に営むうえで酸素が不足しているのは好ましくない状況。その状態に気が付けないのが、『サイレント・ハイポキシア』の恐ろしいところです。いよいよ苦しいと感じた時には、重症に近づいているので危険な症状と言えるでしょう」(同)

 重症化のサインとして自分の感覚があてにならないのであれば、客観的な数値に頼るしかない。しかし、全国に自宅療養者が11万人にのぼる現在、中にはパルスオキシメーターが手元にないという人もいる。

 手に入らない場合は、どうすればいいのだろうか。一つの方法として、ちょっと身体を動かしてみて症状を確認する方法がある。

「血液中の酸素濃度が90%で呼吸の苦しさを感じない人でも、トイレに行ったりして身体を動かすと、少し息が切れてきます。呼吸回数が早くなり、普段よりも息が整うのに時間がかかるといった症状がみられますので、身体を動かしてみるのは1つの確認方法になるかと思います。症状が進むと、酸素不足により、意識がもうろうとしてきます」(同)

 意識がもうろうとしてきたら、もう助けを呼ぶことが困難になるため、症状に気が付いた時点で、早めに医療機関などへ連絡を入れたい。

 新型コロナの患者にみられる「サイレント・ハイポキシア」だが、なぜこの症状が起きるか、そのメカニズムはまだ解明されていないようだ。

「欧米の論文では、呼吸を調整するしくみに異常をきたしているとする仮説があります。息苦しいという感覚は、痛みの感覚にも似ています。呼吸においては、酸素が不足して呼吸困難になる時と、逆に、過呼吸と呼ばれる過換気症候群のように酸素が十分あるのに息苦しさを感じる時とがあります。苦しさを感じると、たくさん呼吸をして酸素を身体に取り入れようとして、呼吸が早くなります。この息苦しさを感じる脳や体内のセンターが、鈍っているという仮説があります。ただ、まだ完全には解明されていません」(同)

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新型コロナが出現してから見られるようになった