【米ビルボード・アルバム・チャート】カニエ・ウェスト『Donda』で10作目の首位、ホールジーが2位に続く
【米ビルボード・アルバム・チャート】カニエ・ウェスト『Donda』で10作目の首位、ホールジーが2位に続く

 カニエ・ウェストの新作『Donda』が1位に初登場した、今週の米ビルボード・アルバム・チャート。

 昨年の夏から度重なる延期を繰り返し、8月29日にサプライズ・リリースされた『Donda』は、演出や参加者も話題となった3回のリスニング・イベントやレーベルとの諸問題、ドレイクとのビーフもプロモーションに繋がり、初動309,000ユニットと好記録を打ち出してNo.1デビューを飾った。この記録は、6月5日付チャートで1位に初登場したオリヴィア・ロドリゴの『サワー』(今週3位)が記録した295,000を上回る、2021年最大の週間ユニットとなる。

 309,000ユニットのうち、272,000がアルバム・ストリーミング(SEA)、1,000がトラックごとのユニット(TEA)、37,000がアルバム・セールスと全体の9割強をストリーミングが占めた。週間ストリーミングは3億5,739万回を記録していて、こちらも5月29日付チャートでJ.コールの『The Off-Season』が記録した3億2,505万回を上回る、2021年最大の週間ストリーミングを更新している。

 なお、『The Off-Season』が12曲なのに対し『Donda』は27曲と倍以上のトラック数という、ストリーミングの集計において有利な条件があるが、『Donda』は集計初日の金曜日から2日遅れの日曜日にリリースしたため、集計期間が5日間というハンデがある。また、現時点ではCDやアナログ盤などのパッケージ・セールスは含まれていない。それらがリリースされれば、再びチャートの上位にランクインするだろう。

 カニエ・ウェストは、本作『Donda』で通算10作目の首位を獲得。Billboard 200で10作以上のNo.1アルバムを保持しているのはその他以下の6組がいて、カニエはエミネム、エルヴィス・プレスリーと並ぶ歴代4位タイとなる。

19作 ザ・ビートルズ
14作 ジェイ・Z
11作 ブルース・スプリングスティーン
11作 バーブラ・ストライサンド
10作 カニエ・ウェスト
10作 エミネム
10作 エルヴィス・プレスリー

 なお、カニエは2004年発表のデビュー作『ザ・カレッジ・ドロップアウト』(最高2位)を除く、2ndアルバム『レイト・レジストレーション』(2005年)以降9枚のスタジオ・アルバムと、ジェイ・Zとのコラボレーション・アルバム『ウォッチ・ザ・スローン』(2011年)含む10作すべてを1位に送り込み、連続記録としては同10作をもつエミネムと並ぶ歴代トップに立った。エミネムも、2位を記録したデビュー作『スリム・シェイディLP』(1999年)のみ首位獲得を逃がしている。

2位『ザ・カレッジ・ドロップアウト』(2004年)
1位『レイト・レジストレーション』(2005年)
1位『グラデュエーション』(2007年)
1位『808s & ハートブレイク』(2008年)
1位『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』(2010年)
1位『ウォッチ・ザ・スローン』(2011年)
1位『イーザス』(2013年)
1位『ザ・ライフ・オブ・パブロ 』(2016年)
1位『イェー』(2018年)
1位『ジーザス・イズ・キング』(2019年)
1位『Donda』(2021年)

 以下、9作をもつアーティストは、ザ・ローリング・ストーンズ、マドンナ、ガース・ブルックス、ケニー・チェズニー、ドレイク、テイラー・スウィフトの6組がいて、ドレイクは9月3日にリリースした新作『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』が次週のチャートで1位に初登場すれば、同10作に並ぶことになる。また、テイラー・スウィフトも11月19日にリリース予定の『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』で10作に並ぶ可能性が高い。

 チャートに戻り、2位にはホールジーの新作『イフ・アイ・キャント・ハヴ・ラヴ、アイ・ウォント・パワー』がデビューした。初動ユニットは98,000で、そのうちアルバム・セールスが70,500、アルバム・ストリーミングが26,500(週間3,476万回)、トラックによるユニットが1,000だった。今週最大の売り上げを記録した週間セールス70,500の内訳、52,500がCD、LP、カセットテープによるパッケージ・セールス、18,000がデジタル・ダウンロードだった。

 Billboard 200でのTOP10入りは、最高2位を記録した1stアルバム『バッドランズ』(2015年)、自身初の1位を獲得した2ndアルバム『ホープレス・ファウンテン・キングダム』(2017年)、そして昨年2位を記録した3rdアルバム『マニック』(2020年)に続く4作連続の快挙で、いずれも2位以上を獲得している。なお前作『マニック』も、リリース直後にエミネムの『ミュージック・トゥ・ビー・マーダード・バイ』がサプライズ・リリースされたため、今回と同じケースで首位獲得を逃がしている。

 アナログ盤のリリース効果により先週1位に返り咲いたオリヴィア・ロドリゴの『サワー』は、44%減少の74,000にユニット数を落とし3位にダウン。ドージャ・キャットの『プラネット・ハー』(53,000ユニット / 7%減少)は安定したポイントを維持して4位をキープし、ザ・キッド・ラロイの『ファック・ラヴ』(44,000ユニット / 9%減少)が7位から5位、モーガン・ウォレンの『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』(40,000ユニット / 4%減少)は9位から6位にそれぞれ上昇した。

 ビリー・アイリッシュの『ハピアー・ザン・エヴァー』(40,000ユニット / 20%減少)は6位から7位に、先週3位に再ランクインしたロッド・ウェーブの『SoulFly』(39,000ユニット / 38%減少)は8位に、トリッピー・レッドの新作『Trip At Knight』 (35,000ユニット / 57%減少)は2位から9位に急落し、それぞれユニット数も大幅に減少した。

 10位には、米ニューヨーク出身の若手ラッパー=リル・テッカの『We Love You Tecca 2』が初登場。初動ユニットは30,000で、そのうち28,000がアルバム・ストリーミングとそのほとんどを占めた。週間ストリーミングは4,052万回を記録している。本作は、昨年9月にリリースしたデビュー・アルバム『Virgo World』(最高10位)に続く2作目のスタジオ・アルバムで、2019年のミックステープ『We Love You Tecca』(最高4位)を含む3作目のTOP10入りを果たした。アルバムからは、ガンナとコラボレーションした「Repeat It」がラップ・ソング・チャートで20位まで上昇し、プロモーションに繋げている。

Text: 本家 一成

※関連リンク先の米ビルボード・チャートは9月10日以降掲載予定となります。

◎【Billboard 200】トップ10
1位『Donda』カニエ・ウェスト
2位『イフ・アイ・キャント・ハヴ・ラヴ、アイ・ウォント・パワー』ホールジー
3位『サワー』オリヴィア・ロドリゴ
4位『プラネット・ハー』ドージャ・キャット
5位『ファック・ラヴ』ザ・キッド・ラロイ
6位『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』モーガン・ウォレン
7位『ハピアー・ザン・エヴァー』ビリー・アイリッシュ
8位『SoulFly』ロッド・ウェーブ
9位『Trip At Knight』トリッピー・レッド
10位『We Love You Tecca 2』リル・テッカ