山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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写真はイメージ(GettyImages)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「子宮頸がんワクチンの接種が進まない日本の問題点」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 先日、子宮頸がん検診を受診しました。毎年受診しているので、検査歴は10年を超えました。検査せずいつの間にか、がんが進行している方が怖いと思い、毎度検査に行くのですが、何度やっても検査自体は慣れないものですね。大体、1週間後に結果を聞きに来るように指示されますが、結果を聞く直前まで「もし、がんだったらどうしよう」と気がきでなりません。

 30歳を超えるようになり、身近な友人が子宮頸部異形成という子宮頸がんの前がん病変を指摘され相談に乗ったことや、若くして子宮頸がんになった方から相談受けることが増えてきた今、自分も他人事でないと感じることが増えてきました。

 私は幸い、母の勧めで19歳の夏に4価のHPVワクチンを接種しました。「子宮頸がんを予防してくれるワクチンが接種できるようになったらしい。婦人科の先生のところで接種しておいで」と強く勧める母を尻目に、「子宮頸がんってなあに? どうしてワクチンまで接種して予防しないといけないの?」なんて思っていたように記憶しています。しつこく接種を
勧めてくる母に負けて、重い腰をあげてようやく接種しに行ったというのが、本当のところです。

 けれども今では、「接種しておいで」と何もわかっていなかった私の背中を押してくれた母に感謝しています。子宮頸がんの予防は、HPVワクチンの接種と定期的な子宮頸がん検診の受診に尽きるからです。

 子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)に持続的に感染することで発症します。HPVには100種類以上の型があり、主に性交渉によって感染します。子宮頸がんの原因になる高リスク型は少なくとも13種類あると言われていますが、このうちのHPV16型と18型の2種類が子宮頸がんの原因の7割を占めています。HPV感染は、子宮頸がんだけでなく、肛門がんや中咽頭がんなどにも関連していることがわかっています。

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