原因がわかれば対処もできる。13年に無臭の糸の混紡に成功し、14年11月にはついに販売開始にこぎ着けた。しかも、及川社長のもくろみどおり、保湿効果があることもわかった。

 こうして3年の歳月を費やした“メカジキデニム”が完成。及川社長の情熱が結実した一本は、金属製のボタンやジッパーを一切使用せず、天然素材のみで作られている。そのまま土にかえるサステイナブルな仕様だ。

「お世話になった地元の漁師さんにプレゼントしたら、みなさんすごく喜んでくれました。海で生きる彼らの誇りの一部になれたようでうれしかったです」

■欧州にもファン広がる

 東日本大震災の発生から10年。ファンの輪は国内のみならず、ヨーロッパを中心に世界中に広がっている。

 しかし、及川社長の挑戦にはまだ続きがある。

「僕の中で、廃材利用のプロジェクトは3部構成なんです。まず“海”のメカジキを形にすることができました。第2部は“丘”で、鹿の毛を再利用したスタジャンとジーンズを近々発売する予定です。そして第3部は“山”のあるものなんですが……。それが何かは乞うご期待ということで」

 気仙沼発のもの作りから目が離せない。(編集部・藤井直樹)

AERA 2021年9月13日号

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