家族とともに跡地に来たメラニーさん。9・11は世界中が理解すべき問題だと語った(撮影/津山恵子)
家族とともに跡地に来たメラニーさん。9・11は世界中が理解すべき問題だと語った(撮影/津山恵子)

 一方、事実を知れば若い人は、9.11を体験した大人よりも冷静だと指摘する。

「9.11を知る大人はイラク戦争やアフガニスタン戦争をなかなか否定はできない。でも、若い人は感情的にならずに、なぜ戦争が始まったのか、その代償は何だったのかなど冷静に見ています」(シェリーさん)

「9.11は、内政、外交、米社会などに大きな影響を与え、米国の21世紀を形成してしまった。なぜこの出来事を無視できるのでしょうか」

 と中西部イリノイ州シカゴの高校教師アニー・ウィリアムズさんも言う。くしくも、米軍がアフガニスタンから撤退し、米史上最も長期の戦争が終わったばかり。しかも、9.11の実行犯である国際テロ組織アルカイダと協力関係にあった武装勢力タリバンがアフガニスタンを制覇し、時計の針は、9.11前に戻った。この関係を理解せずにいることは、さらなる大きな危機に目を瞑ることになるだろう。

「いつも犠牲になるのは、市民。それは新しい世代にも影響を及ぼす」

 ニューヨーク市内の高校生メラニー・クリオロ-ランディさん(17)はこう繰り返した。(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))


AERA 2021年9月20日号より抜粋