「頼るべき先」として真っ先に思い浮かぶのは「かかりつけ医」だ。しかし、ずっと健康だった人ほど、かかりつけ医がいないという皮肉な現状もある。かかりつけ医を「つくる」ために、たいしたことのない症状で受診するわけにもいかないだろう。瀬田さんは言う。
「何かあったらここを受診しよう、とあたりをつけておく。近所の評判や、『ここは発熱外来を夜何時までやっている』『オンライン診療もやっている』ということを、調べて把握しておくことが重要だと思います」
ロコクリニック中目黒の共同代表医師、嘉村洋志さんは「かかりつけ医がいて、ふだんから服用している薬がある場合、自宅療養になったら電話のやりとりで処方してもらえるか、日頃から確かめておくといいかもしれません」と話す。
「ただ問題は薬をどうやって自宅まで届けるかです。『誰も取りに行ってくれる人がいません』とおっしゃる自宅療養の患者さんは多いんです。郵送したり、届けてくれたりする薬局もありますが、そういうときに代わりに取りに行ってくれるなど、『頼れる知人や友人』がいるかどうかが大事でしょうね」
■ネット決済に慣れる
瀬田さんも続ける。
「自分で思い浮かべてみて、明らかにそういう存在がいないという人は、誰か見つけて『何かあったらお願いね』と言っておいた方がいいかもしれません。その点で不安そうにしている方は、とても多いと感じます」
もう一つ重要なのは、ネットや宅配を活用した買い物や、SNSの大切さを認識しておくことだ。高齢者など使いこなすのが難しい人もいるかもしれないが、可能な範囲でうまく使えれば、自宅療養を乗り切る上で大きなアドバンテージになる。
例えば夫婦共に感染して外出できない場合、スマホ決済の「PayPay(ペイペイ)」を使って「頼れる友人」に代金を送って買い物してもらい、玄関の前に「置き配」してもらう。そんな非接触の買い物も考えられる。
「ネットスーパーで生鮮食品を買い物したり、ウーバーイーツなど宅配で食事を調達したり。そのあたりの情報の幅を持っておくと、自宅療養の生活にせめてもの彩りになると思います。また、隔離している家族の体調を顔色も含めて確認したい時など、LINEのビデオ通話などを活用できるようになっておくと便利です」(瀬田さん)
もちろん、そんな日は来ないほうがいい。ただ、少しでもベターな自宅療養を送り、自分も家族も無事生き延びるために、今からできることはたくさんある。(編集部・小長光哲郎、野村昌二、ライター・羽根田真智)
※AERA 2021年9月20日号より抜粋