こう言うのは、在宅医療に特化したクリニック「あけぼの診療所」院長の下山祐人さんだ。ひとり暮らしの自宅療養では、不安感や孤独感がいやが上にも増す。心の支えになるのが、家族や友人だ。電話でなくても、LINE、Facebookやインスタグラムのメッセージ機能などを用いる手もある。急に具合が悪くなった時、保健所や、自宅療養者に対しオンライン診療や往診対応をしているクリニックへの連絡を担う“援軍”としても頼りになる。

 都内に住む会社員の男性(29)は、自宅療養中にSNSを心の支えにして乗り切った。

 8月中旬に職場で発熱し、PCR検査で陽性が判明。すぐに保健所に連絡したが、軽症とみられたのか、「10日間自宅で休んで」といわれた。マンションにひとり暮らし。備えはほとんどなかったが、実家の母親が食料を送ってくれた。

 ただ症状に波があり、熱は高い時で39度近く。頼りは薬局で買った解熱剤のみ。何より不安に感じたのは、症状が急変した時のことだ。基礎疾患はない。だが、同じような状況の人が自宅療養中に容体が悪化し、亡くなって数日後に発見されるというニュースがたびたび流れた。「明日は我が身か」と震えた。

 そんな時に支えとなったのが「#コロナ闘病中のみんなで話そう」というツイッターのハッシュタグだった。闘病中の人たちが参加し、会話が広がっていた。男性も励ましの言葉などをもらったりして、少しは不安が解消した。元患者や看護師、管理栄養士ら専門知識を持った人たちが療養生活に関する疑問にもツイートしてくれていた。

 幸い症状は次第に落ち着き、10日で自宅療養は解除となった。今、しみじみ振り返る。

「こんなに不安な思いをしたのは人生で初めて。SNSがあって、本当によかったです」

(編集部・小長光哲郎、野村昌二、ライター・羽根田真智)

AERA 2021年9月20日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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