──自分を自由に表現できるようになったきっかけは?

 20代半ばでドラマ「ロングバケーション」(フジテレビ系)に出たことですね。それまで、自分にとって役を演じることはどこかポージングだった。でもヒロインの山口(智子)さんをはじめ共演者の方に恵まれて、生の現場を楽しむ感覚を知ったんです。

 相手がこっちを見ているから、何が言いたいんだろうって見返す。目をそらしたら、なんでそらしたのか考えて反応する。変に計算して予定調和にプレイするのではなく、目の前の相手を全身で感じとるんです。

 それと同時に、自分の中に生まれる、悲しいつらい楽しい好きといった感情をすべてひっくるめて思いっきり味わい、楽しむ。あの時あの現場であのメンバーに出会ってから、自分はやたら変わった気がします。

 本当の表情や気持ち、自分というものを提示しなくても物事が進んでいくことに対して違和感をおぼえるようになった。それが、結果的に仮面を外すことにつながっていったんじゃないかな。

 ファンの方との関わり方も変わりました。キャーッて手を振ってくれる人に、あえて「え?」「あ?」とかって意地悪したり(笑)。本当は、笑顔で手を振り返せばより喜んでもらえるんだろうけど、それってその場にいるみんなに向けたポーズだと思うんですよ。選挙前の政治家みたいな。でも、自分は一瞬だけでも相手とタイマンになりたいから、そういうリアクションになるんです。

──休みの日は仕事モードをオフに?

 完全にだらっとリラックスしちゃうと逆にストレスになるんです。少し緩めたい時は、ゆったり腰を下ろして真剣に映画を見るくらいの感じでバランスをとってます。

 基本的には休みの日のほうが動いてますね。1万歩以上は歩くかな。動いている状態が一番快適なんです。じっとしていたら自分が澱んで濁っていく感じがして、歩くことで循環させている。頭がクリアになるので考え事にもいいですね。

 ただ、一人で黙々と散歩するのは嫌なのでパートナーと一緒に。うちの犬ですよ。外に出ると喜んでくれるんだから、最高の相棒です。

(構成/本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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