小川:和田さんは、政治から遠い普通の人代表のようでした。
和田:私一人ではたどり着けなかったと思います。小川さんのおかげで理解する道筋を探ることができたんです。
小川:今の日本では政治を日常的に語ることが避けられ、関わりを持つべきではないという風潮が強い。和田さんの本は、政治を忌避し、僕の言語体系の射程範囲を超えた人たちにも届くんじゃないかと、とても大きな希望を持っているんです。
和田:『時給はいつも最低賃金』で取り上げる問題が幅広くなったのは、小川さんの著書『日本改革原案』(光文社)が影響しています。小川さんの考えに私の疑問や考えをすり合わせていったら、範囲が広くなったんです。
小川:『日本改革原案』は社会が抱える問題を幅広く取り上げていますし、和田さんの不安や問題意識が、それらのどこかに引っかかったのでしょう。
和田:沖縄の米軍基地や移民政策の問題は、以前から気にはなっていました。前著の『世界のおすもうさん』(岩波書店)でも、共著者で文筆家の金井真紀さんが沖縄のお相撲さんを通して辺野古の問題に触れていて。ただ、私は真正面から向き合ったことがなく、小川さんの本をきっかけに、初めて真剣に考えなければ、と思ったんです。
小川:和田さんの本で取り上げた課題は、日本の将来を考えると、どれも避けては通れません。私たちの誰もに関わってくることばかりです。
和田:最後まで読んでも、「この問題はこうなる」という結論はありません。原発問題のように、2人の意見が食い違ったまま終わった章もあります。
小川:住宅問題も和田さんに、だいぶ詰められました。
和田:主体的に政治に取り組むようになってから、小川さんに聞く前に自分で考えるようになったことは私にとって大きな変化でした。「思うこと」と「考えること」は違うと気づきましたし。
自分を追い詰めてきた不安の正体を小川さんと一緒に探っていったら、日本全体が抱える不安と同じであることがわかったことも、大きかったです。個人的な孤独感や不安がやわらぎました。