民主主義が健全に機能するには、少なくとも二大政党が競い合う必要があります。政権交代をしなければ権力は腐敗します。民主党政権だったころの評判はいまだに悪いですが、それでも自民党とは異なる政治の流れを生みました。自民党が野党に転落し、健康を取り戻すことができたのも成果の一つです。しかし、自民党が政権を奪回し長期政権が続くと、たるんできてスキャンダルが相次ぎました。米国のような二大政党間の対立軸がないとこうなります。
菅義偉首相は官房長官時代の切れ味は鋭かった。しかし、トップに立つのは得意じゃなかったのでしょう。大きな流れを見て方向転換したり、発信の仕方を変えたりできなかった。良く言えば実直、悪く言えば柔軟性が足りなかったと思います。
国民の幸福のために新首相にぜひ取り組んでもらいたいのは、尊厳死法と離婚法の制定です。私の父が体の自由がきかなくなった際、医師から入所を勧められたのをきっかけに、特別養護老人ホームの実態を調べました。人間がどうやって死ぬべきか。そういった議論も政治がリードすべきです。また、両親が離婚した後、一番の被害者は子どもです。子どもの養育費を払わない父親が多いのが実情です。子どもたちを救うためにも、離婚に関する個別の法律が必要だと考えます。
○長谷川耕造(はせがわ・こうぞう) 1950年、神奈川県生まれ。「ラ・ボエム」「モンスーンカフェ」など都内を中心に複数の飲食店を展開する
(構成/編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年10月4号