どんな相手も自分に心を開き、スルスルと本音を引き出せてしまう――それは誰しもが手に入れたい能力のひとつかもしれません。ビジネスでは成約率がアップするでしょうし、大切な人との関係も難なく深まるはず。人生においてメリットが多そうです。
そんな魔法のようなメソッドが公開されているのが、累計100万部超のノンフィクションライター・中村淳彦さんが著した『悪魔の傾聴 会話も人間関係も思いのままに操る』です。過去に中村さんがインタビューしたタレントが本音を話してしまい、所属事務所の関係者に「お前は悪魔みたいな奴だ!」と怒られたことから、このタイトルが決められたそうです。
相手の本音をどんどん引き出す方法は、「コミュニケーション能力や、ネアカ・ネクラなど性格はまったく関係ありません」(同書より)と中村さん。こちらから何か働きかけるよりも、むしろ「自分の話をしない」ことこそが「悪魔の傾聴」では大切になります。
その基本を学べるのが第1部の基礎編です。このスキルの要ともいえる「ピックアップ・クエスチョン」について見てみましょう。中村さんが例としてあげているのが、20代女性と40代男性との会話です。20代女性が
「実はアイドルが好きで。特に好きなのはハロプロですね。この前、Juice=Juiceのライブに行ってきたんです」
と話しかけてきた場合、みなさんならどう返事をしますか? 同書の40代男性のように
「知らないなぁ。ハロプロだったらモーニング娘。だよね。俺は安倍なつみとか好きだったなぁ」
なんて答えてしまう人、意外と多いのではないでしょうか。せっかく相手が心を開いて話してくれているのに、自分の知るネタにすり替え、相手の話を潰してしまうのは悪手です。この場合は
「へー、(Juice=Juiceの)ライブはどこでやったの?」
「そうなんだ、(Juice=Juiceの)誰が好きなの?」
「Juice=Juiceってハロプロなんだね? 知らなかったよ」
などです。この「相手が発言した単語や主旨を拾い、即時に短い質問を投げかける」というテクニックが"ピックアップ・クエスチョン"です。相手の話を聞き出すコミュニケーションにおいて、「否定しない。比較しない。自分の話をしない」というのは大前提。そのうえで、ピックアップ・クエスチョンをつなげて相手の語りを進めることで、さまざまな情報を自然と引き出せるのです。
さらに第2部では実践編、第3部では心の作り方、第4部では上級編を紹介。「欲望と感情を意識すると会話はどんどん膨らむ」「90分一発勝負と心得る」「『心のセンタリング』を意識せよ」といったポイントを学びながら、相手の本音を引き出す「悪魔の傾聴」を確実に習得していくことができます。
人との会話がどうも弾まない、相手との距離を縮められないと悩む人は、同書を読んで簡単なところから試してみてはいかがでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]