日本競馬界の至宝ディープインパクトが、世界最高峰レース、フランスの凱旋門賞に挑んだのは、2006年。直線でいったんは先頭に立ったものの、3位入線に終わり、レース後の検査で禁止薬物が検出されたとして失格となった。
あれから15年。ディープの娘が、父の無念を晴らしてくれるかもしれない。娘の名はスノーフォール(牝・3歳)。日本で生産されたアイルランド馬だ。凱旋門賞は日本時間の10月3日、パリロンシャン競馬場で開かれる。
期待の娘は6月4日に英GIオークスで、2着馬に16馬身もの差をつけて圧勝。これは1983年に記録された12馬身を大幅に更新するレース史上最大の着差だ。7月12日にはアイルランドのGIオークスでも優勝した。
10月3日の凱旋門賞での有力候補の一角。今年参戦する2頭の日本馬と同様に、日本人ファンから注目を集めている。
とはいえ気になるデータも。ディープインパクト産駒は次々と凱旋門賞に挑戦してきたが、13年のキズナの4位が最高。マカヒキ(16年14着)、サトノダイヤモンド(17年15着)、フィエールマン(19年12着)と、近年は日本のGIを制した産駒が2桁着順に敗れた。
ディープ産駒は瞬発力勝負が得意。それに反しヨーロッパの競馬場の芝は日本よりも深く、パワーを求められる。こうした馬場適性の問題も含め、いつしかファンの間では「ディープ産駒は欧州では勝てない」という“定説”が流布するように。
しかし朝日新聞スポーツ部の有吉正徳記者は、この“定説”を全否定する。
「ディープインパクト産駒の中からスノーフォールを含め6頭の欧州GI馬が出現しており、合計10勝しています。欧州で走る産駒の少なさを考えれば、こんなに適性のある種牡馬もいないんじゃないでしょうか」
それで欧州の生産者は、ディープ産駒を求めるわけだ。スノーフォールの母ベストインザワールドは、アイルランドの繁殖牝馬。日本の生産牧場ノーザンファームに預けられ、ディープとの子を産んだ。同牧場ゼネラルマネージャーの中島文彦氏が説明する。