「当時、当牧場では、クールモアスタッド(アイルランドの生産者)がディープインパクトなどの種牡馬を種付けするための繁殖牝馬を数頭預かっており、ベストインザワールドもそのうちの1頭でした。素晴らしいスピード能力を伝えるディープインパクトの種牡馬としての信頼感は相当のものがあって、希望したものだと思います」

 繁殖部門の厩舎長・大房篤史氏が、幼き頃のスノーフォールを回想する。

「ディープインパクトより母馬に体形が似ていた記憶があります。ヨーロッパから日本への環境の変化などで、ストレスやダメージが残っていないか心配したなかでのお産でした。でも産まれ落ちから骨量や馬格があり安堵しました。順調に成長して、病気などで手がかかることは無かったです。扱いやすくワガママをしない馬でしたが、おっとりしているというよりはメリハリのある性格でした。どちらかと言えばガリレオ(母の父。GI3勝のアイルランド馬)系の体形と動きを見せていました」

 これまでディープ産駒5頭が勝った欧州GIの多くは距離1600mで、最長でも2100m。それに対しスノーフォールは、凱旋門賞と同じ2400m前後のGIで既に3勝を挙げており、距離への不安はない。そのうえ母の全姉(父も母も同じ)ファウンドは16年の凱旋門賞を制覇しており、血統的裏付けもある。

「凱旋門賞は、多くのホースマンがぜひ優勝したいと思うレースのひとつです。ディープインパクト自身も国内で素晴らしい実績を残して挑戦しましたが、凱旋門賞を勝つことの難しさを痛感しました。ディープ産駒が優勝することは、ディープ自身の能力の高さだけでなく、日本産種牡馬のレベルの高さを示すことになると思います。また今年はディープインパクトの孫のディープボンド(父キズナ)、当牧場で生産・調教したクロノジェネシスも挑戦します。今からとても楽しみにしています」(中島氏)

 日本競馬界の期待をしょって、アイルランド娘が異次元の脚を見せる!

(本誌・菊地武顕)

 ※週刊朝日10月8日号に加筆

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