日本一のラッパーと世界一のDJのユニット、Creepy Nutsが、3年半ぶりのセカンドフルアルバム「Case」をリリースした。そこには、生々しく彼らの“リアル”が映し出されている。AERA 2021年10月4日号に掲載された記事で、2人に話を聞いた。
【写真】蜷川実花が撮った!AERAの表紙を飾ったCreepy Nutsはこちら
* * *
——9月、セカンドフルアルバム「Case」をリリースした。
R-指定:Creepy Nutsを組んでからのほとんど、成長、かまし、自己欺瞞、全部が出ているアルバムです。去年は、今のこの気持ちを書いとかなあかんって思うような出来事が結構あって、過去の自分のリリックや発言にもケリやけじめをつけないといけないのかな、というところから始めました。
■ライトが羨ましかった
今の状況はありがたいし、そこに大喜びしてる状況も書かないと嫌味やなって思う自分がいて。でも一方で、成功してビッグマネーでちやほやされて、が目標だったわけではなく、生活できようができなかろうが「とにかくラップをしたい」という気持ちが根本にあるので、戸惑い続けている自分もいる。アルバムを作り始めた時は、そういういろんな状態を言い切ろうとしてたんですけど、結局言い切れないですよね。いろいろな自分がおるんで。それを表現するには、ある程度の曲数のアルバムを作る必要があった。向き合う過程で、ちょっとしんどかった部分もあります。
DJ松永(以下、松永):しんどいゾーンに入ってるんだろうな、とは思っていました。歌詞に落とし込むのは難しいけれど、必要な時間だったと思います。
曲作りの作業工程は、俺がシンプルな1ループを作って、Rにラップで自由に泳いでもらって、その後トラックに活かす。最初からガチガチに決めるより、自由に泳いでもらった方が想像以上のものになる手ごたえを散々感じてきたので。
Rがあげてきたデモに、「俺はこう返そう」とトラックをガラッと変えて送ったり、サビ前のブリッジに水の音を入れたり、そういう球の投げ合いが醍醐味というか、二人のかまし合いが楽しいんです。
Rのラップはリズムが複雑すぎて、俺も最初聞いたときは、どう複雑なのかさえわからないことがある。でも再構築していると、「こういうことがしたかったのか」と気付く。そして、そこに完全にハマるトラックが大体1個あるんですよ。トラックの細かい芸に一番気付いてくれるのはやっぱりRだし、作り方を通じてもお互いに進化しているなと実感します。