「技術における我が国の実力は慎重に分析しないといけない。非常に複雑なシステムを統合して作り上げるということは経験も要るし、要素技術だけでは全てが決まらない」「人類未到のシステムである核融合炉を作ろうとするとき、そういうこと(事故)がないように、統合した技術をきちんと貫徹できるシステムを作る実力が日本にあるのかどうかということ、これは慎重に考え、準備しないといけない」

 日本の原子力業界に、その実力があるのだろうか。

「使った燃料以上の燃料を生み出す」として、夢の原子炉(核分裂炉)といわれた「もんじゅ」は、1985年に着工し、95年に初めて送電に成功した。しかし1兆1千億円以上費やしたのに稼働後22年間で250日しか動かせず、2016年に廃炉となった。

 核燃料サイクルの要となる再処理工場(青森県六ケ所村)も、完成予定は1997年だったが完成時期は26回も延期され、いまだに出来上がらない。

 リスク評価や管理に失敗して東京電力福島第一原発を爆発させ、その後始末の方法もまだ決まっていない。

 政府の今の動きは、核融合を前倒しすることで、核分裂の失敗を覆い隠そうとしているのではないかと感じさせられる。核融合をすぐに政策ベースであてにできるほどの実績はあるのだろうか。拙速の愚を繰り返してはいけない。(ジャーナリスト・添田孝史)

AERA 2023年1月30日号

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