岸田派は総裁派閥なのに、重要閣僚や党4役をとらなかった。
「これは麻生氏や安倍氏に配慮したんじゃないでしょうか。岸田首相は長期政権のために麻生派、谷垣グループも含めた大宏池会の実現が頭にあるのは間違いない」(前出の国会議員)
そして岸田派の国会議員も大宏池会構想についてこう話す。
「党4役か重要閣僚の1つはうちの派閥でとると思っていた。麻生氏は財務相からも退きましたから仕方ないですけどね。派閥幹部も『うちの影がうすい』と不満を言う人が少なからずいます。安倍氏が長期政権を保てたのは、最大派閥である清和会の数の力がありました。うちは人数としては5番目の派閥。長くやるには、大宏池会構想の実現は不可欠です。主要ポストは麻生派に取られても我慢しようという声しきりです」
長年、君臨した財務相のポストを退いた麻生氏だが、岸田首相誕生の際は派閥の会合で「ど真ん中で岸田首相を支える」と豪語し、ご機嫌だった。
大宏池会構想に警戒感をにじませるのが、安倍氏だ。当初、自身が推した高市早苗政調会長を「幹事長に」と言い、官房長官には文科相から横滑りした萩生田光一経産相を希望していた。しかし、どちらも実現しなかった。
「閣僚名簿を見て安倍さんは『なんか違うよ』と不満を漏らしていたようです。総裁選で議員票2位の高市氏こそを女性初の幹事長にと、意気込んでいましたからね。それに党役員、閣僚人事で清和会は数こそは取ったが、明らかに麻生派がいいポストを抑えた。正直、岸田首相とは微妙なすきま風があるのかもしれない。当然、安倍さんは大宏池会構想で麻生さんがキングメーカーになることも気にしている。いずれ安倍氏も清和会会長に復帰し、睨みをきかせるでしょう」(細田派の国会議員)
前出の田村氏はかつて宏池会の職員として政治の道へ入った後、自民党本部に移った。自民党内で繰り返される派閥の権力闘争を間近で見てきた生き証人だ。