
ミュージカル「オリバー!」で、「スリの元締」役を、市村正親さんとのダブルキャストで演じる俳優の武田真治さん。作家の林真理子さんが、ミュージカルへの思いや魅力をうかがいました。
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林:お久しぶりです。9年ぶりですよ、ここに出ていただくの。「ピーターパン」でフック船長をなさったときでした。
武田:そうでしたね。2回も出していただいてよろしいんでしょうか(笑)。
林:もちろんです! 武田さん、絶対忘れていらっしゃると思いますが、あのときコースターに「武田真治」ってサインして、携帯の番号も書いてくださったんです。
武田:えっ、そんな生意気なことをしたんですか。
林:私、それを今も大切に持ってるんですよ。
武田:うれしいです。
林:今度のミュージカル「オリバー!」(東京公演10月7日~11月7日、大阪公演12月4~14日)で、武田さんはフェイギンの役をなさるんですね。タイトルは「オリバー!」で、オリバー役は少年たちだけど、フェイギンって実質的な主役って言えるくらい、重要な役ですよね。
武田:ありがたいなと思います。コツコツやっていればこういうこともあるんだなと思って。
林:今回は市村正親さんとのダブルキャストですけど、私、「オリバー!」はずっと昔、マーク・レスター主演の映画で見ましたよ。フェイギンってすごいワルなのに、何とも言えない愛嬌(あいきょう)がありますよね。歌いながらお金を数えたり、ニヤニヤしながら宝石を見たりするしぐさが、とても魅力的だった記憶があります。難しいけど、いい役じゃないですか。
武田:はい。親がいない子どもを集めてスリ集団をつくっているので、設定だけを考えたらとんでもない悪党なんですけど、自分がいなきゃ子どもたちは生きていけないし、子どもたちによって自分も生かされているから、情は存在していると思うんです。その情を深く演じすぎると、殺伐とした時代を生きる厳しさを表現しづらくなるし、厳しくしすぎてもお客さんに感情移入していただけないし、というバランスの難しさはあります。
林:踊りもあるんでしょう?