![水野美紀さん](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/819mw/img_bd7ad308e2660404a735325292dd107335339.jpg)
42歳での電撃結婚。伝説の高齢出産から4年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。今回は、作・演出を務め、さらに出演もする舞台の稽古で怒涛の日々を送った水野さんが、小屋入り前日に遭遇した「癒やし」について。
【チビちゃんにとっての「視線」とは…唐橋充さんのイラストはこちら】
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秋の訪れを感じるカフェのテラス席。涼しい風が通り抜け、足元の落ち葉を転がしていく。
ああ、だからだろうか、気分が晴れない。妙にセンチメンタルな気分に持っていかれる。
ここ1カ月、舞台稽古で怒涛の忙しさだったのが一息ついたから、というのもあるし、どうにも寝付けずに寝酒を飲んだのが、まだ少し下腹のあたりに残っているからというのもあるだろう。
脚本を書いて演出して出演もしている今回の舞台、死ぬほど大変だろうなとは思っていたが体力的には案外大丈夫で、だけどその分メンタルがきつい。
まず執筆中には脱稿までのあせりと、このシーンは、セリフは、これで良いのか、これがベストな選択か、という不安と常に戦って、稽古場に入れば、完成形にもっていくまでこれまた常に不安と向き合うことになる。
セットの使い方、シーンの転換、音楽、効果音、殺陣、振り付け、カツラ、衣装、小道具、映像。
これらが全部理想の形に整って、芝居が整って、全体像が見えて来るのは稽古のラスト数日になってから。
それまでずーーーっと産みの苦しみ。
夜ベッドに横になっても稽古場の様子が脳内でフラッシュバックして寝付けない。
毎回芝居を作る時には、
「なんでこんな大変なことに手を出してしまったのだろうか」
と後悔するのだが、喉元過ぎればすっかり忘れてまた作りたくなる。
不思議なもんで喉元過ぎてしまうと、楽しかった部分の思い出しか残らないのである。出産に似ていると思う。
で、この原稿を書いている今日は、稽古を終えて小屋入りする前の間の休日である。