セレブの街とされる東京都港区にもこども食堂はある。70代の“ばあちゃん”たちが運営するこども食堂もある。

 そこは地域のみんなが集い、元気になれる場所なのだ。

 そんな集いの場をコロナ禍が直撃した。後半では危機に立ち向かうこども食堂の取り組みが紹介される。

「一斉休校のショックで学校が止まっても、こども食堂の人たちは止まらなかった。すぐに食材や弁当を配布するフードパントリーに切り替え、現在も7割がさまざまなかたちで運営を続けている。実にたくましい、と感動しました」

 こども食堂は本来、自治会などが担うべき、地域のセーフティーネットの役割も果たしている。さらに「今後の社会に必要な解決策も詰まっている」と湯浅さん。例えば多様性や共働を学ぶ場として。

「『みんなちがっていい』という多様性は、実は分断も生みやすい。自分と違う人間を認めるのは『面倒くさい』ことですから。違いを理解し共存を図るにはインクルージョン(配慮)が必要で、それにはこども時代から自分と違う人のいる空間に身を置くことが大事だと私は思っています」

 湯浅さんには障害のある兄がいる。子どものころ兄を仲間に入れようと、みんなで草野球の新しいルールを編み出した。そのほうがみんなで楽しめて有益だったからだ。

「こども食堂に関わりだしてから兄のことをよく思い出すようになったんです。多様な人が集まるこども食堂はインクルージョンの大きな芽のある場所だと思う。そこでがんばっている“同志たち”に、私自身もはげまされるんです」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2021年10月11日号

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