
AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
『つながり続けるこども食堂』は、格差・貧困問題のいまと可能性を紹介した、湯浅誠さん渾身のルポルタージュ。2012年に一市民の活動からスタートし、全国4960カ所に達している「こども食堂」(20年12月時点。むすびえ調べ)。「こどもがひとりでも安心していける無料、または低額の食堂」と定義され、こどもの貧困対策と同時に「地域交流の場」という重要な意味を持つこども食堂について、筆者である湯浅さんがやさしく紐解いていく。
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いまや誰もがその名を知っている「こども食堂」。でも、ちょっと待って。「食べられない子」だけが行く食堂ではないと、知っていましたか?
「全国に約5千あるこども食堂の8割は『誰でもOK』です。『食べられない子のための食堂』は少数派ですが、それがすべてだと誤解されている。それはあまりにもったいない。民間から自発的にはじまって地域を元気にし、気づいたら貧困問題にも対応していた。みんなにしっくりいくやり方だったからこれだけ広まった。そんなこども食堂は現代のすごい“発明”なのですから」
と、湯浅誠さん(52)は言う。ホームレス支援をはじめ長年、格差・貧困問題に関わってきた湯浅さんもその発明に驚き、影響された。
本書は全国のこども食堂のルポルタージュからはじまる。「カブトムシを10匹いただきました~!」のかけ声にワクワクと集まるこどもたち。その様子を笑顔で見つめるお年寄り。お母さんはママ友とおしゃべりをし、不登校を経験した高校生は、いま同じ悩みを持つ後輩を見守っている。
「『食べられない子、おいで』と言っても当事者はなかなか行きづらい。ならば多世代に門戸を開き、地域の居場所となり、そこで困り事を抱える子に目を配る。それが多くの運営者のありかたなのです」